シカというのは、
もともとは、牡鹿、オスの鹿のことで、
牝鹿、メスの鹿のことは、
メカ、といった。

鹿一般は、単に、
カ、といったそうである。

なにかを、一音でいうのは、
なんだか、大陸的、中国語っぽい気がする。

今、講座で、万葉集の、巻八、秋の雑歌あたりを
勉強中で、萩を歌った歌に鹿がよく登場する。

歌の中で、
鹿は、萩の花を妻問いに、
やってきたり、
萩の枝についた露を
首飾りにみたてて、
プレゼントしようとしたり、
するのである。

皆の前提として、牡鹿の妻は、
萩だという、了解があった。

いつも夕方になると、鳴く鹿が、
今日は鳴かないなぁ、
という歌が、
名歌中の名歌だったりする。

万葉人と鹿の関係は、
なにか、きゅんとするものがある。

それにしても、
奈良公園あたりにたくさんいる、
あれは、野生の鹿だそうであるが、
そこに、鹿せんべいを売っている、
小さい屋台みたいなのが、いっぱいある。

あんなところで、せんべいを売っていると、
鹿に全部、食べられてしまいそうであるが、
せんべいは、十枚ぐらいずつか、
紙の帯で束ねられていて、
その帯で、束ねられてると、鹿は、
それを、食べようとしない。

一旦、帯をほどくと、せんべいをもらおうと、
どんどん近づいてくる。

萩の花に妻問いにやってくる鹿が、
せんべいに向かって、どんどんやってくる。

風流と思って、見れば、これも、いい。

洋司