昨日は、いつもより少しだけ、墨が濃く擦れた。
ちょっと濃くなりすぎたので、筆先で水を足しながら、
書いていたが、微妙にかさつくのであった。

いつもは、どちらかというと、ちょっと水っぽいぐらいで、
書いていると思う。

少しかさつくけれど、
たまに、濃くなると、あとで見た感じが、
本物っぽいような、気がする。

ここでいう、本物とは、
博物館とかお寺で見た、
奈良時代から鎌倉時代ごろの、
経などの書のことである。
空海が書いたのも見たことがある。
聖徳太子の真筆、といわれるものも見たことがある。

そういうものと、比べるなど、
あつかましいことである。
鉄面皮。
大変な楽しみを知ってしまったなにかのようである。

昨日書いたものを、今、出してきて見てみたが、
昨日より、濃く見える。
一晩で、水分がさらに飛んで、
墨が定着したものと思える。

墨は、前に、小さくなった、と書いたときには、
実際は、元の、半分よりちょっと減ったぐらいのことであったが、
今は、もう本当に小さくなった。
子供の頃は、よく、クレヨンを、
最後の最後まで使い切って絵を描いていたものであるが、
今は、この墨を、最後の最後まで使い切るのを、
ちょっと、楽しみにしている。

洋司