15日は、朝から、シネマ尾道をたずねた。
7年間空き家だった映画館を、
ある方が、尾道に映画館を、という思いを胸に、
町の人たちの協力も得て、昨年、再生させたのである。

つい先日も、大林監督や、南原さんなどを招いての
舞台挨拶、トークショーなど開かれたらしい。

映画館の中を、見学させていただき、
お話もうかがい、体の中にある思い出や、
様々なイメージがわいてくるのであった。

僕が生まれて初めて、父につれられて入ったのも、
空き家になるずっと前の、この映画館であった。
建物のほとんどは、そのままの形で再生されている。

ずっとモノトーンだった記憶が、鮮やかに彩色されてゆく。

スクリーンで上映がはじまった音が、
壁越しに聞こえてくる。

高校生の頃には、友達たちと、ホラー映画を見に入った。
仲間らが怖がるのを見ては、面白がった。
自分だけは、怖がるところを見せまいと、頑張ったが、
最後のほうで、ポップコーンが飛ぶほど、びっくりして、
かっこ悪かったものである。

ETもここで見た。
今のような、入替制ではなかった頃で、
切符を買って、入りたければ、すぐ入れる。
入ったほうが得であるというような、
せこさ、から、入ってみると、
クライマックスシーンである。

もちろん、もう一度はじめから見たが、
台無しであった。

思春期独特の暗さや痛さに半ば陶酔しながら、
デイアフターとかいう、水爆が落ちてしまった世界の映画を
見に行ったら、寅さんが、同時上映だったこともある。

映画の思い出など、あまりないかと思っていたが、
書き出せば、とまらなくなりそうである。

しかも、それが、尾道の映画館、というところが、いい。
ビデオやDVDでは、けっして味わえない。

今度は、ゆっくり、一日中、シネマ尾道で、
映画を見て、過ごそう、と決めた。

尾道本通り商店街を歩いて、
マスハラ楽器店や、FMおのみちの前を通って、
駅に引き返す。

その道で、前夜語らった方々とも偶然会う。

駅。電車は、なかなか来ない。
僕の実家は、尾道駅じゃなくて、東尾道から、徒歩の距離である。

一駅、尾道水道の海を見ながら、東へ向かうのであった。

洋司