総理大臣が、漢字を読み間違えて、
今、漢字の本がよく売れているのだそうである。

皆、他人事でない、という思いもあるらしい。

読めるけど、書けない漢字というのも、
僕など、とっても多い。
それを思うと、
僕のこともそうであるけれど、
総理大臣のことも、さらに、
冷や冷やするところである。

万葉集の原文、
いわゆる、万葉仮名は、
全部、漢字なのであるが、
その、漢字の使い方は、
大変自由で、豊かで、
とっても、洒落ている。

万葉集巻一の二の歌の、

国原は 煙立つ立つ
海原は 鴎立つ立つ

っていうところ、
このあいだ、ふと原文を見ると、
煙のところの立つ立つは、
立龍

鴎のところは、
立多都

と、あった。
同じ立つ立つでも、
イメージの広がりがある。

立龍では、
炊煙が、龍の形に、生き生きと立ちのぼって、
そこに暮らす人たちの豊かな生活を、想像するし、

立多都では、
広大な海をも含んで、多く栄えた国、
その上を、
多く飛んでいる鴎、生命の繁栄なんかを、
想像する。

僕の勝手な解釈であるけれど、
そこはもう、自由にイメージして、
楽しんでもよいところであろう。

それまで、文字がなかった日本に、
漢字が入ってきて、
それを、
豊かな想像力と、感性で、
自由に楽しんで、
使っている、万葉の頃に、
憧れるなぁ。

洋司