昨日のことであるが、
「飛鳥と万葉集」という、講座に参加したのである。

第1部は、
乾善彦関西大学文学部教授による
「飛鳥の万葉故地」という講演。

万葉集に詠われた土地を、
スライドで、
大正時代に撮影された貴重な写真と、
現在の写真を比べながら、見ることができた。

僕も、実際に、行って見たことがあるので、
大正の写真の、電柱などほとんどない風景に、
少しでも、昔の様子を見ようと、目を凝らした。

田園が広がる風景も、
万葉の頃には、
それは見事な都だったのである。
ただ、歌に詠まれるのは、都の建造物ではなくて、
山だったり、川だったり、風だったり、わき立つ雲だったり。
今も変わらず、見られるものである。

第二部は、
「万葉の景観 古代から未来へ」。
西光慎治明日香村文化財課考古学技師による
発掘調査に基づく飛鳥の都の復元画像と、現在の画像を
比べながらの講演に続き、
乾教授、朝日新聞天野幸弘さんを交えての
パネルディスカッション。

僕としては、万葉集の歌と、飛鳥の風景が、
連動して、お話が進むのが、非常に楽しかったのであるが、
それにしても、あの見事な都があってこその万葉集なのだなぁと、
あらためて思った。
万葉集に、日本人の心の原風景を見るなら、
そこには、最先端の都があるのである。

例えば、現在の大都会東京が、なんらかの理由で、
どこかに、そっくり移動しなくてはならなくなり、
そのあとには、もう、何もない、
いたずらに、東京風がふくばかり、と。
そんな想像をすれば、
「采女(うねめ)の 袖吹き返す明日香風
 都を遠み いたずらに吹く」
など、急に、現実的に、響くのであった。

洋司