入手したのに、ずっと読んでいない本が、
たくさんある。

80年代に、ミヒャエル・エンデを3冊。
映画「ネバーエンディング・ストーリー」が流行ってたので、
「はてしない物語」
「モモ」
「鏡の中の鏡」
買ったのに、これはいつでも読める、
などと思う間に、読まないまま、
20年以上たってしまった。

映画は見ていない。

そのころは、村上春樹やジョン・アービング(村上春樹の訳というのもあって)
稲垣足穂、レイ・ブラッドベリ、宮沢賢治、フィリップ・K・ディック、広瀬正など、
自分でも、何が好きか、あまり決めず、というか
わからず、読んでいたような気がする。
もし、そのころに「はてしない~」を読んでいたら、どうだったかな、
と、ふと、あのころの風や景色の色合いを思い浮かべるが、
心細いばかりである。

数日前に、偶然手にとって、
「はてしない~」を読み出したら、
思わず引き込まれて、
楽しくて、久々に、本の中と現実との区別が
つかないような、夢のような夢の世界に
連れて行ってもらったのである。

新渡戸稲造の「武士道」を読んで、
お侍になったような錯覚で、近所を歩いたみたいな、
ま、どちらかといえば、深く、はまりやすいのであるが、
このたびは、ファンタジーの世界に。

その中で、様々に、自分のこととして
思い当たることにたくさん出会い、
主人公らが、それを越えてゆく場面では、
もう、僕の心も、一緒に、そこを越えて
羽ばたくのであった。

あぁ、今、出会うべくして、出会ったのであろう、
と、思うことが、多かった。

80年代に、読んだのでは、
こちらが、ついていけなかったかもしれない。
90年代には、読み飛ばして、ストーリーの確認で
終わったかもしれない。
ここ数年で読んだら、
ファンタジーに過ぎると、途中でやめたかもしれない。

いずれにしろ、僕は、ここに来て、ようやく、
「幼ごころの君」と、目が合ったのであった。

洋司