クラウス・フォアマンさん、来日の時に、やはり本にサインをしていただく機会があり、出かけたことがある。
クラウスといえば、デビュー前のビートルズが、ハンブルグで下積みをしていたときに知り合って、その後も、「リボルバー」のジャケットの絵を手がけたり、ソロになってからのメンバーのレコーディングやライブに参加したりと、もう、歴史上の人物である。
ドイツの名前の、Voormannというのを、僕らは、ずっと英語読みでブアマンとかとかブーアマンとか言っていた。いろんな本にもカタカナで、そのように書いてあったものである。実際に、ジョージ・ハリスンのコンサートのビデオでも、メンバー紹介の時ジョージは、ブアマンと言っているように聞こえるのである。ところが、最近の本では、フォアマンと書いてある。僕ら、古いものとしては、どうしても、ブアマンだろう、と思うのである。
と、そこにサイン会のニュース。これは絶対に、ご本人に、本当のところは、どう発音するのか、聞いてこようと決めて出かけたのであった。やはり並び、僕の番が来て、通訳の方を通して、聞いたのであった。そうしたら、クラウスが、そのきれいなライトグリーンの目で、やさしくこっちをみながら、「英語で?それともドイツ語で?」と英語で質問したあとで、僕が「ドイツ語でお願いします」というと、「フォアマン、フォアマン、フォアマン」と三度、静かな声で、ゆっくり教えてくれた。すごく優しそうで、透明感があって、こんなふうに言うと失礼かもしれないけれど、かわいらしい、スマートでハンサムな方であった。皆から好かれ、友と慕われるのが、よくわかる感じである。もう、迷わず、フォアマンさんと、呼ぶことにしたのであった。

洋司