思いがけない場所で、偶然、思いがけない人に会う。気がついて、思いっきり手を振りながら、近づいてみるが、まったく無反応なので、ものすごくよく似た別人なのか、とも思った。だとしたら、だいぶやばい手の振り方である。あるいは嫌われていて、無視して通り過ぎるのか、とも思ったり。でも、もっと近づいてみれば、確かにご本人で、ようやく気付かれ、まさか、こんなところで、ということで、互いに大変に驚いたことであった。ほとんど外出もしないし、手を振って近づくような知人は少ないのに、こういうことが、たまにある。不思議なような気がするが、まさか、額田王などには、会えるわけがないのであるから、それを思えば、自然なことなのかもしれない。野守は見ずや君が袖振る。

洋司