毎日磨っている墨が、だいぶ小さくなってきたのである。石鹸や消しゴムみたいに、最後まで使い切って、何もなくなる感じを、墨で味わうなど、想像したことのない気持ちである。
硯の表面は、つるつるに見えて、意外とざらざらという、面白いものである。指で洗おうとすると、指を痛くすることがある。小さくなった墨を磨りすぎると、指を痛くするかもしれない。なくなってしまうまで磨る、というのは実現しないかもしれない。

洋司