万葉の初期には、日本にまだ、暦が伝わっていないので、うぐいすが鳴いたから春かな、とか、衣が干されているから、夏が来たのかな、などというのである。暦は当時の中国の皇帝の発想で、世界も宇宙も、皇帝に従うのであるから、何月何日には、必ず春、みたいなことになる。季節感というものは観念的なものになってしまうのである。暦が入ってきてからの歌では、そういうことを歌うことに意味のある歌なども出てくる。春なのに雪だ、などというのは、今の歌にもよくあるけれど、その感じは、暦が伝わった頃から受け継がれている感覚かもしれない。暦がなければ、梅に雪も別に、歌にすることでもないのかもしれないと思えば、歌も暦で、だいぶ変化したのであろう。
洋司
洋司