前にお世話になっていた事務所に、僕の荷物がたくさんあるというので、見に行ってみれば、写真が非常に多い。整理しなくては、どうにもならない。同じようなものとか後頭部のみ写っているようなものなどは、整理の対象。忘れている場面や懐かしいものもかなりあり、いくらか記念にいただく。僕が本物のサーファーの皆さんと、サーフィンをしている写真などは、衝撃的である。プロモーション用写真の撮影で、御前崎に行き、現地で、サーフボードを作って暮らしていらっしゃる方やそのお仲間の、真っ黒に日焼けした、たくましいサーファーの皆さんと、半日過ごしたのであった。1995年の夏である。僕は、赤い横縞の昔風の水着を着ている。お借りしたサーフボードで、波と戯れている。実際に、僕が波乗りなど出来るはずもないのであるが、写真だけ見るぶんには、なんだかキュンとくる青春の一場面である。撮影のあと、皆さんに、歌を聞いていただいたりして、その日のうちに帰ったのである。プロモーションで実際に使用した、皆さんと浜辺で、ロングボードと共に写っている白黒の写真のことは、覚えていたけれど、そのほかの写真は忘れていて、僕の横縞が、赤だったことも、すっかり記憶の外であった。ほかにも、船橋や三鷹の太宰治の暮らしたあたりを訪ねた頃の写真など、一番やせているころだったのか、ものすごく線が細い人物として写っている。なんだか、知らない人の、まるで幕末の人たちの写真の整理でもしているような気分であった。

洋司