中学の時、卒業して行く先輩が「わかりやすく言うと、駅の券売機などを作る会社に勤めるのだ」と言ったとき、僕は「では、券売機を見るたびに、先輩を思い出します」と言ったのである。中学の時は、電車など、あまり乗ったこともなく、券売機を見る機会も少なかった。今、券売機はタッチパネルで音声も出、紙幣を入れても、もどってくることはめったにない。ものすごく進化している。そして僕は、今も、あまり電車には乗らなくなっているが、券売機を見れば、先輩を思い出すのである。マネージャーと駅にいる機会があって、僕がキップを買おうと、うろうろしていると、マネージャーは、携帯電話を持っている。それで改札を入るのだと。公衆電話は、だいぶ少なくなったけれど、券売機も少なくなる日がくるのかな。いずれにしても、僕は券売機でキップを買い、先輩を思い出すのである。あの時、先輩は、僕が学生服の胸のポケットにさしていた、シャープペンシルを「これを記念にくれ」と言って持っていった。入学の時、学校でもらった僕の名前入りのシャープペンシルである。先輩に持っていかれるのが、嬉しい気がした。まさか、もう、持っておられないだろうけれど。
洋司
洋司