スタジオには分厚い扉2枚がある。どんな声でも、外にもれることはないのである。発声練習、気持ちよく大声を出している。と、誰もいるはずの無いスタジオに、人の気配。振り向けば、スタジオのスタッフと利用者。忘れ物をしたかもしれない、ということで、入ってこれらた。こちらは、大声で、叫んでいる真っ最中で、誰かが扉を開けて入ってきたことに、まったく気がつかなかったのであるから、非常にたまげているのであるが、その叫び声に、たまげていたのは、入ってきたお二人だったろうと思う。まだ叫び声のまま、「なにもなかったようですよ」といえば、お二人、目をそらしたまま、そそくさと出て行かれた。怖かったのかもしれない。インターホンでことわって、入ってきていただきたかったと思うのである。そうすれば、少しは、御持て成しできたのであるに。
洋司
洋司