大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)の歌に「来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを 来むとは待たじ 来じと言ふものを」(あなたは「来る」といっても来ないですっぽかすときがある人なのに、「来ない」というのを、待つわけがありますまい)というのがある。たまたま開いた本に出ていた。
「来ない」と言われているのに、待っているのか、「来ない」と言っておきながらやって来た男に、「あなたのことなど、待っていなかったわ」と言ったのか、受け取り方は、読む人それぞれで、いいわけであるから、自由にあれこれ、想像してみて、楽しんでいる。男のほうも、郎女の、そういうところが、いいと思ったか、その逆か。この人の歌は、面白そうである。男性歌人なら、柿本人麻呂が切ない。と、ヒットチャートを語るようである。

洋司