信号待ちの交差点。こちら側の真新しいスーツ姿の若者が、いきなり「マモルー」と叫んだ。向こう側にいる若者の名前らしい。「マモル」は、ごく普通の家庭用の自転車に、ダラダラの形で座っており、ダボダボの服装。ちょっと尖らせた髪を触っていた。道路越しに名前を呼ばれて、一瞬あたりを見わたしたが、ほどなくスーツ姿を見つけ、ニヤニヤするのである。マモルという名前が、なんだか新鮮であった。

洋司