ストラトキャスターのトレモロアームは、押さえると、ボディーの裏から、弦を差し入れて、ネックに向かわせる支えとなるブリッジを、てこの原理で、尻上がりに引き上げるので、張られている弦がゆるみ、音が下がるのである。その時に、ブリッジは、ボディーに、表では、6本のネジで、裏では、バネで支えられている。ブリッジのお尻は、ボディーに引っかかり、しっかりと、とどまるので、バネの力が強すぎても、裏に引き込まれることは、ないのである。逆に、バネが弱いと、弦の張る力で、ブリッジはつねに、尻上がりに、持ち上がった形になってしまうことがある。バネは5本取り付けられる。僕は3本取り付けている。これは、好みによるかもしれない。昔、あるギタリストに聞くと、その人は3本で、左右の2本を斜めがけにしていて、このほうが、アームがかかりやすい、などと言うので、僕も一時期真似してみたことがあるが、ザ・東南西北のサイドギターというものは、まず、トレモロアームを使う演奏はないのであるから、普段は、アームは取り外し、バネも5本セットして、チューニングの安定をはかった。中学生のときに、ストラトモデルのギターを購入したが、それにももちろん、トレモロアームがついていた。説明書などなく、使い方が分からないので、ただ、回してみたところ、時々、音がかわるので、これは回して使うものなのだと、思っていたのである。回すとゆるくなり、やがて、取れた。ネジでくっついているのである。程なく、それは、押さえ込んで使用するのだと知ったが、初めは、ブリッジが壊れそうで、怖かったものである。ギターによって、少しずつ、トレモロアームの構造が違うが、働きは、同じである。今でも、普段は、遠慮して押さえるのであるが、力いっぱい押さえると、なんだか、ギターと親密になったような気がするのである。思いっきりチョーキングして、言えば、愛しさのあまり、弦を切るとか、ジミヘンなら、弦を歯で齧り、ギターを叩き壊して、燃やすとか、いや、本人に聞いてみないことには、わからない、それはまた別の問題かもしれないが、弾き倒して、壊してみたくなる衝動を、愛しさの延長線上に感じないこともない。犬をかわいがる飼い主が、犬の頭などを思いっきり、撫で回すというのか、そういう気分だと思うのである。
洋司
洋司