オーティス・ラッシュなど、左利きの人が、右利き用に弦を張ったギターを逆さまに持って弾くという人は多い。ラッシュの真似をして、ギターを逆さまに構えて弾いてみる。大変新鮮である。ギターを初めて弾いた時のような、ギターに慣れていない時のような気持ちが、思う以上に、感覚によみがえり、不思議である。ギターの表面が平らであるということがわかったり、精巧な作りで、美しいものだということがわかったり、使い込んだ味のあるものだとわかったり。特に使い込んだものというところでは、もうここにいない右利きの僕が使い込んだのを知っている、初心者の左利きの僕が、それを借りて弾いている、というような不思議な気がする。弾き方を知っているのに、全然弾けない。ものごと、知っていればできるというものでもないのである。そして、そのことを書こうとパソコンに向かえば、今度は、キーを打つ手が、なんだか変である。左右逆さまになったような不自由を感じる。他人の体を、その人の癖を覚え込んでいる体を、使わせてもらっているような、罪な感じさえする感覚。
洋司
洋司