鏡は上手に映しているけれども、こちらは、その向こうに銀色のものがあるような気がするのである。黒のギターのボディーに白の机が映っている。黒に白が映りこんでいるから実際には、白に見える。それを黒という理由がないのであるが、おかしなことにこれは黒である。そういえばこの間、白の服を着て出かけ、黒の服になって帰ってきた。前に書いたファスナーが引っかかっていた服の修理の件で。その服は黒であった。直ったと連絡があったので、取りに行ったのであるが、その時に着ていった白の服のファスナーが今度はかんでいて、そっちを修理に出し、直ってきた黒いほうを着て帰ったのである。ここに何度も登場する、列子の、白い犬が黒い犬になって帰ってきたら、お前は追っ払うだろう、っていうやつである。
洋司
洋司