小学生の頃に、そろばんを習っていたけれど、まったく習得できなかったのである。頭で計算して、それをそろばん上に再現していただけで、二度手間。大変下手な者であった。もったいないことである。何桁も並ぶ数字を、先生は一度見たら覚えるのだ、と教えてくださるが、僕には、ほとんど覚えられず、寂しいことであった。途中から伝票算というのが出てきて、領収証ぐらいの大きさの紙をめくりながら計算するのであるが、このめくるのが、僕は非常に下手で、また、あの紙の角の尖ったところが、眉間に刺さるような錯覚を覚え、1ページ目から頭痛がしてくるのである。軟弱なことである。高速道路などで、白いラインが飛び飛びでやってくる、あれも同じ感覚で、苦手なのである。このネタは、もう何度も書いた。苦手なことや、下手なことを、書くことで振り払おうとしているようである。しかし、よけいに思い出して、具合が悪くなってきた。思い出さないが良い。今は、そろばんも使わないし、車に乗ることもないので、これはもう、竹馬同様、救われている。もちろん、そろばんも車も竹馬も、大変素晴らしいものに違いないと、思っている。

洋司