ジョギングを終えて歩いていると、カマキリが飛んできた。蚊などを見慣れていると、大変大きいものだ。その葉っぱのようなハネで、バタバタとやってきて、その大きな複眼で、見るともなくこちらを見、無視する。そこに、僕とカマキリがいるということは、同時に、そこに僕とカマキリがいない、ということが完全にありえない世界であるが、僕とそいつ以外に、そのことはこの宇宙では誰も知らないことを思えば、なんの証拠もなく、これはまったくの嘘かもしれず、仮に嘘ではなくても、もしかしたら、僕の思い違いなのかもしれないのである。他人との、ま、虫でもいいんだけど、の接触とは、二つの宇宙の接触ではないかと、思ったからどうしたと言うことでもない。いずれ、歌の一行にでも、なればいい。数文字の宇宙である。

洋司