僕がジョギングをするのは、一日にたったの20分か30分であるが、その間に非常に高頻度で会う人たちがいる。ほとんどきまった時間に走っているし、その人たちも丁度その時間帯にそこを通行されるのだから、会うとなれば、だいたい会うことになる。
外国の男性と日本の女性のカップルは、よくすれ違う。このあいだは、まったく違う時間帯に、別の場所ですれ違った。日本語でやり取りされていた。僕は知り合いでもないのに一瞬、会釈しそうになった。いつもはフードをして走っている。お二人は、こちらがジョギングの男とはわからなかったろう。それにジョギングの人とは、普通に歩いている人以上に、自分が思っているほど、道々すれ違う人の印象には残りにくいものだと思う。昨日見かけたジョギングの人と、今日見かけたジョギングの人が、同一人物かどうかは、なかなかわからない。いわんやジョギングをしていないときのその人をや。列氏の白い犬、黒い犬の話を思い出す。ついでにページをめくれば、「人間は蚊のための存在か」と。昨日見かけた蚊を思い出す。袖触れ合うも他生の縁なれど、他生でも袖触れ合っただけだろう。他生では、あの蚊が人で、こちらが蚊だったこともあるのかもしれぬ。そのことは思い出さぬが。

洋司