太宰治の「人間失格」、表紙を人気漫画化のイラストに変えたら、売り上げが伸びたそう。
昭和十五年発表の「俗天使」のなかに、「これから五、六年経って、もう少し落ちつけるようになったら、たんねんに、ゆっくり書いてみるつもりである。『人間失格』という題にするつもりである。」と書いている。「人間失格」発表は、昭和二十三年。十五年ごろのほうが太宰は、それでもゆっくり時間があったろう。二十三年はボロボロだったろう。
「人間失格」もいいけれど、ま、後期の「桜桃」「フォスフォレッセンス」「ヴィヨンの妻」等、いいのはいっぱいあるけれど、「俗天使」とか、同じ頃に書かれた「鴎」とか、いわゆる中期頃のは、僕としては、初めて読んだときには、共感を含んだ衝撃を受けた。
全集で順を追って読んだのもあろうか。夏目漱石の「こころ」と並ぶ大ベストセラーだけど、今でも大ファンなので、ここにきてさらに売れているのは嬉しいと思う。

洋司