辻村寿三郎が「新八犬伝」の人形美術を担当したのは、寿三郎が40歳の時。昭和48年だから、僕は7歳ごろで、テレビにへばりつくようにして見ていたものだ。テレビでの人形の見せ方にだいぶ工夫したそう。顔を小さくする代わりに頭の形を、前後に長くし、髪の結い部など、ぐっと後ろにして奥行きをつけた。目はよせて、いつも何かをじっと見ているように。そのデフォルメに見るものは、引き付けられた。好きなキャラクターは沢山いたし、「玉梓が怨霊」は非常に怖かった。僕らの世代のあれを見ていた人は、だいたいああいうのが、ある種の怖さに結びついているんじゃないかと、思う。深夜、廊下などで怖いのは、あれを思い出すからだ。あれに比べたら、怖いものは少ないといえるかもしれない。
洋司
洋司