海が干上がったとき、バクテリアのような生物は地下に逃げた、というどこかで読んだ記事のことを、ずいぶん前に書いたことがある。その生物のうちのどれかが、僕らのご先祖様だろうと。それにしてもよくお逃げになったことだ。海が干上がるなど、もちろん初めての経験だったろうし、それまで生きてきた中で、逃げるという行為は体の中にそれほどインプットされてなかったろう。
今、蟻でもなんでも、捕まえようとすると、すごく逃げる。カタツムリみたいに、逃げ切れないやつもいる。カタツムリはいい。硬い殻をもっている。ナメクジはどうしたことだ。諦観か。それでも追おうとすれば逃げようとする。
人も地球上の生物の中では、動きはたいしていいほうではないかもしれない。いざというときに逃げる、危険を知る能力ということでは、ご先祖のバクテリアのような生物に劣るかもしれない。結局、同じご先祖様ということになるのかどうか、花や草木に近いところはある。

洋司