医者から、今日で終わりですね、と言われると、ほっとする。
2ヶ月ほど歯科医に。ずっと前に、親知らずを抜いたが、同じ時期になおした奥歯が、親知らずを抜いた関係で少々動き、具合が悪くなってきていたので、ついになおしてもらうことにし、1月から通っていたのである。
前に詰めてもらったのを、全部取り替える時に、ものすごいドリルで、壊されるのには、だいぶまいった。先生も、いつもは何もおっしゃらないところが、「痛いようだったら、言ってね~」などと念を押される。これが怖かった。何かの時には、トンカチで、ガンガンやられ、「はい、ごめんなさいね~」と、非常にやさしい先生なのであるし、行われていることは、ごく繊細なことであると思うのであるが、こちらは頭蓋骨を内側から割られている感じで、なかなかに恐怖であった。とちょっと、大げさなようであるが、これはしかし、けっこうなストレスであった。
昔は、歯医者に行っても、ちょっと痛いぐらいで、うろたえるのはかっこ悪いし、そう思っていれば、なんということもなかったけれども、このごろは、正直になったか、想像力が豊かになったか、少しのことでも、うわっと思う。子供のころ歯科で、隣で治療を受けている大人が、痛い痛いと、叫んでいたのを見て、みっともないと思ったものであるが、これは案外に、大人の方が、いろいろわかるだけに、叫びやすいのかもしれない、とこのごろは、思い直していたところである。
大人の方が、なにかの境地みたいなところには、たどり着きにくいものなのであろう。

洋司