風が強かったからだろう、思いがけず、きらきら光る星が見られた。尾道の夜空は、真っ黒で、星も気味が悪いくらいあって、ぜんぜん違うなと、このあいだも思ったのである。

松本隆さんのホームページの掲示板に、尾道水道のことを書いておられる方があり、尾道水道で泳ぐと「エンコウに連れて行かれるでぇ」と、おばあさんに言われたのだとか。エンコウとはカッパのことらしいと書いておられる。
それで、うっすら、エンコウというものを、思い出すような出さないような。水の中から何かが出てきて、連れて行くというのは、前にも書いたが、伯父がよく話してたので、この体のどこかに、そのものが、実感のようなものとして、いるのは確かなのである。伯父の話してたのは池である。

ファンクラブの会報用に書いた記憶地図に、小さい池をいくつか書いたが、それらの中に、何かがいるという感じは、いまだにする。池や湖は、その中の植物が育ったり、土砂や様々な堆積物により、やがて湿地になり、そして跡形もなくなる。そこを掘ればあるいは、なにか怖いものの骨など出てくるということがあるのかもしれない。

それにしても、エンコウという響きが、非常に怖い気がし、胸がそわそわするのが面白い。
以前、「河童」など書いたのは、体の奥のほうの実感がそうさせたことなのかもしれないと思うところである。

洋司