.  (ラエリアンムーブメント・アジア大陸代表のブログより)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

19世紀は英国の時代、


20世紀は米国の時代、


21世紀以降は中国の時代

------------------------------


DIAMOND ONLINE


台頭する中国の“謎”を解く鍵 
習近平にまつわる8つの特徴(下)


加藤嘉一 [国際コラムニスト] 
【第43回】 2015年1月27日 

台頭する中国の“謎”を解く鍵?習近平にまつわる8つの特徴(上)から続く


重圧を重圧と受け取らない習近平の無神経さと大胆さ


(4)コントロール欲が強い


ワシントンDCの政策論議のなかで、習近平政権の動向を語る際にしばしば使われる表現が「Xi has consolidated power」、即ち、「習近平が権力基盤を固めている」という認識である。なかには、「習近平は中華人民共和国建国以来最強の皇帝だ。その行使できる権力は、毛沢東よりも、トウ小平(トウの文字は「登」におおざと)よりも大

きく、強い」(某シンクタンクの中国専門家)という見方すら浮上している。


本連載でも検証してきたが、改革事業の動向や反腐敗闘争を通じての政敵打倒、権力掌握状況からして、習近平が一定程度「権力基盤を固めている」という現状を、否定する根拠を見出すことは難しいだろう。


権力を掌握するためには、情報力や行動力、人脈力や判断力な

ど、あらゆる“力”が求められるのだろうが、機能的な要素として重要だと思われるのが、習近平が「改革領導小組」に代表されるように、改革や政策をトップダウンで、ダイナミックに推し進めていくためのメカニズム構築に積極的であるというファクトだ。(第21回コラム参照:「改革小組」始動で見え始めた習近平の本気度 最重要課題の「公正」はどこまで進むのか、2014年1月28日)


習近平は8つのポジションでトップの地位を務めてきた。


・ 中国共産党総書記
・ 中華人民共和国国家主席
・ 中央軍事委員会主席
・ 改革領導小組組長
・ 国家安全委員会委員長
・ ネット安全・情報化小組組長
・ 国防・軍隊改革小組組長

・ 中央財経領導小組組長


中央から地方、政治から経済、政治局から国務院、党から軍……、誰が指導的な立場にあり、最終的に誰による統率によって物事が決まり、進んでいくのかを可視化する作業に習近平は長けている。そして、その背後に潜むのが、習近平が内心に強く抱くコントロール欲、即ち、すべては自分の力によってコントロールする、そのためなら、あらゆる手段を行使するという欲望であるように私には思われる。


(5)最後は自分で決める


1つ目の「人の話をよく聞く」でも触れたが、習近平には、安易に自

分の意見を語らず、人の意見を傾聴することでその場(例えば政治局会議)の空気をじわりじわりと支配し、各人が充分に意見を述べ、皆が出すべき意見は出したと感じたところで、「机をおもいっきり叩くように決断し、これから何をすべきかを指示する。こうと決めたからには決して同僚たちに口を挟ませない」(習近平をよく知る太子党関係者)。そういう頑固さも持っているようだ。


 反腐敗闘争においてもその頑固さは際立っている。周永康、徐才厚、令計画といった(薄煕来の“落馬”は習近平が総書記に就任する前、即ち胡錦濤時代に起こっている―筆者注)、バックに巨大で複雑な権力構造を抱える大物政治家を“落馬”させるには、周到な準備と充分な根回しはしつつも、最後の最後は自らの意思だけに従って決断し、行動できるだけの器とキャパシティ、そして勝負勘が不可欠だろう。準備はどこまでいっても準備、根回しは所詮根回しでしかない。


 実際、高級官僚たちを次々に“落馬”させていく過程において、習近平には各方面から重圧がのしかかっている。あらゆる勢力が自らの権益をぶち壊そうとする習近平に対する反撃の機会を伺い、足を引っ張ろうとしている。ただ習近平はそういう外部の動きに惑わされず、自分の考えとスタイルを貫いているように見える。


 反腐敗闘争の“マネージングディレクター”を務める王岐山中央規律検査委員会書記に対しても、反対勢力からの逆襲を恐れず、細かいことは気にせず、思いっきり任務を遂行するようにというスタンスを終始堅持しているようである。「習近平には重圧を重圧と受け取らない無神経なところがある」(前出の太子党関係者)。

イデオロギーに固執せず
共産党支配に重きを置く

6)リスクを取る


 習近平を知る秦暁は「習近平はリスクを取る男だ」と言う。


 江沢民の側近であった周永康、胡錦濤の側近であった令計画、そして人民解放軍内で巨大な権力・権威・権限を誇っていた徐才厚を“落馬”させた習近平に対して、「あの男はリスクを取らない」と断言できる男は世の中にそうはいないであろう。


 外交に目を向けてみると、たとえば、昨年11月、アジア太平洋経済協力会議(APEC会議)の際に日本の安倍晋三首相と会ったときの光景が思い起こされる。


 日本側は北京開催のAPEC会議で安倍・習会談を実現させることが日中関係改善へのきっかけになると必死だった。中国側も、中国経済にとって不可欠な日本との経済関係や米国を含めた国際世論といった角度、そして約1年前に靖国神社に参拝した安倍晋三に会うことで浴びざるを得ない国内世論・ナショナリズムという、もう一つの角度からのプレッシャーに挟まれていた。


 結果的に、非公式、たったの25分、国旗・笑顔なし、という形式的にも内容的にも充分な会談ではなかったが、習近平は安倍晋三に会うことを決断した。日中双方がそれぞれの立場から歩み寄った結果だと評価できるが、この対日外交案件から、習近平は少なくとも“リスクを取る男”であると判断ができると私は思っている。


(7)行動が読めない


 またもや反腐敗闘争絡みの例になるが、周永康や徐才厚、令計画といった大物政治家、そして次々に“落馬”していく中央の次官級・地方の副省長級以上の高級官僚たちの命運をめぐって、共産党関係者や国内外のウォッチャーたちの間でも「もしかすると……」といった予想はあったが、実際に蓋を開けてみると、「そこまでやるのか……」という反響が充満していたように思われる。


 国家機関・国有企業・軍隊をはじめとして、いつ、どこに、どこまでメスを入れていくのか予測がつかず、すべての関係者を怯えさせる一種の“恐怖政治”が、習近平に対する“読めない”という感覚を一層深いものにしている。


 もちろん、“読めない”ことがもたらし得るものはリスクばかりではない。プラスの効果をもたらすこともある。実際、反腐敗闘争によって党・政府・軍内で既得権にしがみつき、改革や粛清の阻害になってきた勢力を潰していくプロセスには疑いなくポジティブな一面を見いだせる。それによって進む改革事業があるからだ。上海自由貿易試験区構想、国有企業改革、金融改革、土地改革、戸籍改革など、反腐敗闘争によって実質的に恩恵を受ける分野は確かにあるのだ。長期的には、権力闘争としてではなく、制度設計としての法治がどこまで根付くかが鍵を握る。


 習近平の外遊に同行したことのある外務官僚から見た習近平の“読めない感”は以下のとおりである。


「外遊の際に締めるネクタイの色とか、相手国との会談の際に、私たちが原稿を用意する必要があるのか、ないのか、用意したとしても読むのか読まないかとか、事前に読めないことが多い。政府内で会議をしていても、手元に用意された資料にまったく眼を降ろさなかったり、他の出席者がまったく気にしないような箇所を真剣に読み始めたり、ソワソワしたり、独特というか、独自の世界観を持っている感じはする」(第31回コラム:“読めない”ことが新たなリスクへ いま、習近平は何を考えているのか? 、2014年7月1日)


(8)党への執着と西への抵抗

 本連載でも検証してきたが、習仲勲という、建国に貢献し、その後国務院副総理・広東省省長・中央書記処書記・政治局委員などを歴任した“老革命”を実父に持つ習近平、そしてその周辺やブレーンには、「中華人民共和国を創ったのは中国共産党であり、党があっての国家であり、国家が安定し、繁栄するためには、党の権力と威信が着実に強化されなければならない」という潜在意識が強いように見受けられる。(第15回コラム参照:亡党亡国の危機を懸念する習近平ら“老紅衛兵” 改革断行という最後の賭けに踏み出せるか? 、2013年10月22日)

彼らは“共産主義”というイデオロギーや“社会主義”という政治体制など、昨今に至っては、ある意味形骸化した産物に執着しているわけでは決してない。彼らが執着するのはあくまでも「共産党支配」の5文字に限る。それを組織的に堅持していくために、そういうイデオロギーや政治体制が必要なのである。私の理解では、“共産主義”や“社会主義体制”といったものは、「思想信条」というよりは、「組織体系」に重点が置かれている。


 近年、西側の自由民主主義を信奉するリベラル派知識人が拘束されたり、FacebookやGoogle、またニューヨーク・タイムズといった西側の価値観を代表する媒体が中国国内で“封殺”される傾向が益々強まっているのは、習近平が思想や価値観という角度からこれらの企業に反対するというよりは、共産党一党支配という組織体系を維持するという角度から、これらの企業を邪魔だと捉えているからだ。


 習近平は少なくとも自らがトップを担当する期間中は、共産党という組織の断固たる維持と強化に執着し続けるであろうし、共産党支配の邪魔をする可能性のある思想・人物・勢力は躊躇なく潰しにかかるだろう。いつ、誰を、どのように潰すかに関しては、上記7つの特徴を参照されたい。


 本稿最後の問いである。


 それでは、以上8つの特徴は、政治改革、そしてその先にあるかもしれない“中国民主化”を促進させるか、あるいは後退させてしまうのか?

 現段階では分からない。


 習近平が何を考えているのか、何処へ、どのように行き着こうとしているのか、まだまだ読めない部分が多いからである。その一挙手一投足を注意深く追っていくしかない。本連載でも随時分析と検証を加えていくつもりだ。

(敬称略)


http://diamond.jp/articles/-/65762







-