やはり日本のコメはうまい!

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東洋経済オンライン:

シンガポール人絶賛!日本米が倍値で売れる店

「本当のクールジャパン」とは、汗をかくこと

 成長著しい東南アジア、そのハブであるシンガポールには富裕層が多く集まる。同国の高級ホテルやレストラン、そして個人宅に日本産米を精米し届けるのが「三代目俵屋玄兵衛」だ。一獲千金を狙えるアジア富裕層ビジネスで成功する秘訣はどこにあるのか。運営するワッカシンガポール社の佐藤祐一社長に話を聞いた――。
ワッカシンガポール社の 佐藤祐一社長。「三代目俵屋玄兵衛」ブランドで売る日本産米は、シンガポールの富裕層に人気だ

現地で精米、あのマリーナ・ベイ・サンズでも人気

「三代目俵屋玄兵衛」(以下、俵屋)は日本人が経営するワッカシンガポール社のブランド。主に北海道や新潟産のコメをシンガポールに運び、同国にある精米所で精米した後レストランなどの店舗や個人宅に届ける卸・小売ビジネスを展開している。現地のスーパーで売られている日本米の多くは、日本で精米された後に運ばれるというから、これが一番の違いである。


俵屋では、同国でただ一人という「コメ・食味鑑定士」の資格を持った佐藤祐一社長が農家に足を運んで厳選したコメを扱っている。レストランで多く使われるカリフォルニア産の日本米と比較すると、同じ重量当たりの値段は5割増しから2倍にもなる。そんな俵屋のコメが「マリーナ・ベイ・サンズ」「リッツカールトン」「マンダリンオーチャード」ホテル内のレストランや駐在員の家庭など、いわゆる富裕層の間で拡がっているという。


佐藤社長によれば、2011年12月の事業開始以来、累計85店舗1700世帯の個人宅にコメを届けてきた1カ月間の売上は10万シンガポールドル(約800万円)に上る。店舗への営業はテレアポとサンプリング、個人宅への営業はフリーペーパーへの広告出稿や、チラシの配布を行っているが、最近はクチコミや既存顧客からの紹介がきっかけで新規の注文を受けることが多いという。

「食通」が多いシンガポールの人々に、刺さるには?

「富裕層向けのビジネスを行う場所として、シンガポールは非常に適した国です。日本から仕事で来ている駐在員や、出張や旅行で日本を訪れたことのある地元の方々など、比較的所得水準の高い人が集まっています。一方、国土が狭くお金の使い道は限られているため、食事にこだわるひとが大勢います」(佐藤社長)

俵屋のコメを使うレストランには、日本産米をアピールするために、高級感のあるプレートを提供している

「高級レストランでは一晩で10万Sドル(約800万円!)使った客がいたなんて話も聞きます。そのようなひとたちを相手にするわけですから、お寿司屋さんなど、コメがなにより大事な業態では品質にこだわるのは当たり前。ラーメン屋や餃子屋、地元の人が経営している普通のレストランなどでも、コメにこだわる店舗がたくさんあります


富裕層向けのビジネス成功の秘訣は、「積み重ね」(佐藤社長)。「頼してもらい、裏切らないこと。これを繰り返していくことです」。ありきたりなようにも聞こえるが、「かかわる人みんながちゃんとやらないといけない。だから難しい」のだという。“かかわる人”にはコメを作る農家、コメを運ぶ配送会社、そして買う顧客すらも含まれる。


コメの味は、その年の出来や精米する日の湿気・気温、精米前のコメが入った袋の管理具合によっても違いが出るという。だから少しでも良い状態でシンガポールに運ぶためにエアコン付きのリーファーコンテナを使用し、またコメの仕入先である農家には実際の顧客の声のほか、虫食いの有無や食べたときの食感、梱包などについてフィードバックするようにしている。


しかし、どれだけ工夫してもコメの味は炊くまではわからない。だから初めて注文してくれた顧客には、コメの炊き方や保存のコツを手紙に書いて同封するようにしている。

俵屋の倉庫にはコメがたくさん。ここで精米し配達される

最も苦労したのは、店舗・個人宅への配送だったという。配送は日系の業者に委託し、顧客が指定した時間に届けるようにしているが、始めの頃は届かない、配送が遅れても業者からの連絡がない、連絡がないから途中でキャンセルといった事態が多発した。


佐藤社長も当時を思い出して「私は相当なクレーマーだったと思います」と自称するほど、それこそ業者に何度も何度も、改善の要望をしたそうだ。

「こうして苦労してコメで築いた信頼のネットワークが宝」だと佐藤社長。昨年は土曜の丑の日にあわせて日本産の鰻を1尾70Sドル(約6000円)で販売。現在は醤油も1本15Sドル(約1200円)で扱っているというが、いずれもよく売れている。「良いものを良いものときちんと伝え続けることで、コメだけに留まらず食のコンサルタントとしての立場を確立することが大事です。俵屋がオススメしている商品なら間違いない。そう思っていただけるように」


せっかくなので、俵屋であつかっている農家直送のコメを紹介したい。今、個人客に人気なのが北海道産の「ゆめぴりか」。炊き上がりが綺麗でモチモチ感があり「THE日本のコメ」(佐藤社長)だという。


一方、店舗を訪れる客に人気なのは北海道産の「ななつぼし」。自己主張しすぎないから主菜を引き立て、さらに冷えても美味しいから便利に使えるという。最近販売を開始した新潟・黒崎産の「コシヒカリ」も人気は上々だ。

クールジャパンを貫くなら、本気で売れ!

俵屋では精米の度合いも選べる。現地の日本人からは白米での注文が多いが、実はシンガポール人からは対照的に玄米に近い状態での注文が多いという。なぜか。その違いは、白米の方が他のアジア産のコメとの違いがわかりやすく、またシンガポール人は健康志向から玄米を食べることに慣れているからだろうと佐藤社長は推測する。

現地で個人客に一番の人気ブランドは北海道産の「ゆめぴりか」。佐藤社長に言わせれば、「THE 日本のコメ」のような存在

昨今、「クールジャパン」を追い風に日本の良いものをアジアに輸出しようとする動きが国や自治体や民間企業で盛んだ。


この文脈において俵屋は先駆者だが、佐藤社長にいわせれば「日本はまだまだ本気じゃない。作ったものを売る人材が足りていない」。「ちょっとイベントに出展して、売れなさそうだから進出を諦めるというケースが多すぎます」


「俵屋も営業を開始して最初の2カ月間は、訪問先から突っぱねられて売上げがゼロでした。価格が高かったからです。それでも品質を維持できる適正価格以下には値引きせず、サンプリングのコメだけでも試してもらうように訪問してお願いを続けました。するとその粘りが効いてか、徐々に受注件数が増え始め、そのうちに当たり先が見えてくるように。覚悟を持って腰を据えてやり続けたことが、ブレイクスルーにつながったのです」(佐藤社長)。


今後の目標は、まずシンガポールで年商150万Sドル(約1億2000万円)に到達すること。また、年内にはインドネシア・ジャカルタにも進出する計画があるという。「マーケットが拡大しているので、間違えずにやっていればビジネスは伸びていくと思います。だからこそ、怠けてはいけないのです」佐藤社長は自信をのぞかせつつ、気を引き締める。http://toyokeizai.net/articles/-/43894