傍観者の多い日本
宋 文洲 http://is.gd/zwMhra
北京の家で唯一見られる日本のテレビはNHKです。今週のメルマガはテーマを決めていたのですが、先ほど虐めに遭って自殺した中学生の特集をみて急遽テーマを変えました。
自殺した中学生は自殺前日にもクラスメイトの親友にメールを送りました。
教室などで執拗に行われた酷い虐めは誰でも知っていることです。しかし、誰も止めに入らないのです。この親友も含めて。
NHKの統計では、日本の学校では虐めを見て見ぬふりをする確率が年齢の上昇につれてどんどん高くなります。虐めはどこの国にもあるのですが、この見て見ぬふりをするのは、日本の学校の教育の結果だと思います。
前回、偶然にも私の子供達が米国東部のサマースクールに通っていたことに触れました。実はそのサマースクール中にも日本人留学生同士の虐めがありました。
米国現地の子供が7割ですが、3割ほどが世界各地から来た生徒です。
一番多いのはもちろん中国の子供達ですが、日本からの子供達も7、8人居ました。
私の息子は東京生れで7歳まで都内の小学校に通っていました。それに母親が日本人ですし、自然に日本国籍になっています。どこにいっても自分は日本人だと言うし、日本人としての誇りも持っていると思います。
ここ4年間ずっと北京の中国語インターに通って世界各国の子供と一緒に学んできましたが、日本人のクラスメイトは殆ど居ませんでした。このためか、米国のサマースクールでは放課後、よく懐かしい日本人の子供達と遊んでいました。
その中で虐めが起きました。一番大きい子でもなく、一番強い子でもない中途半端に強い子が一番弱い子である○○君を虐めるように呼びかけました。
当然すぐ成立しました。
ある日、ドッジボールで遊んでいた時、皆がそろって○○君にボールを強くぶつけます。逃げても逃げても逃げられない○○君がとうとう泣きだして森の中に走っていきました。それをみて虐めに参加した子供達は皆で笑っていました。
私の息子が止めても皆が聞いてくれないため、先生に言いました。「先生、皆で○○君をボールで叩く。もう泣いているのにまだやる。アンフェアだと思う。」と。
先生は当然日本人の子友達を呼んで叱りました。それ以来、私の息子も仲間はずれにされ、悪口を言われるようになりました。幸いして私の息子は英語も中国語も不自由ではないため日本人のグループに関わることを止めました。
二カ月後、私は子供達を迎えに学校に行きました。駐車場に車を止め、勝手に子供の宿舎に入ったり、子供の食堂でご飯を食べたりして観察していました。
私の息子がわざと日本人の子供達を避けていることに気付きました。
そろそろ帰国するので日本人の子供達が集まって写真撮影するというので私夫婦と娘は参加しましたが、息子が見付かりません。虐める子も虐められる子も大人に分からないような笑顔を浮かべて楽しそうに撮影しました。もちろん、そこにはその虐めを止めることができたはずの大きい子供達も居ました。
「なぜ撮影に来ないのか」と息子に理由を問い詰めた時、やっと虐めの実態を知りました。親達が高い費用を払ってはるばる地球の裏のサマースクールに来ているのに、そんなみっともないことをするなんて、私は何とも言えない無力感に襲われました。そして息子の行為を褒めました。
虐め自殺の話はもう聞きあきました。その都度悲しみ、怒り、そして虚しくなります。教育改革と叫ぶ言論人と政治家は多いのですが、果たして焦点が合っているでしょうか。
また、長い間日本企業のコンサルティングをやってきましたが、「和」の下で行われたこの種の傍観行為(当事者意識の欠如)は組織の不作為と不正を許してきたと痛感します。もし年齢増に伴って傍観者が増えるのであれば、今の日本では、社員が経営の傍観者、市民は政治の傍観者、官僚は財政の傍観者になっていないだろうかと、変な中国人が余計な心配をしてみました。
P.S.
まあ、せめて我々ビジネスマンから早く国際展開しましょうよ。
それによって経済がよくなるだけではなく、子供達も当事者意識を持ち、視野を広げます。私の息子はもしずっと日本に居たらきっと前に出る勇気がなかったでしょう。
来る9月17日に「アジア経営者会議」が盛大に行われます。
国内外から2000人ほど参加する予定ですが、読者の方々がもし興味があるならば、ぜひ申し込んでみてください。
私も講演します。
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http://krs.bz/softbrain/c?c=3200&m=152172&v=494cd350
(終わり)
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