孫崎 享 さんの記事です:
Date: Mon, 17 Jun 2013 06:37:42 +0900
Subject: 尖閣諸島とポツダム宣言
尖閣諸島に関する日本政府の立場は「尖閣諸島は日本固有の島であって、国際的に何の問題もない」である。
多くの人は、この日本政府の立場を正しいと思っている。
しかし、この立場は国際的に多分、通用しない。
日本は1945年8月ポツダム宣言を受諾した。広島、長崎に原爆が落とされた直後である。厳しい恫喝の下、受諾したのだから、守らなくてもいいという人もいる。しかし大多数の日本人は守るべきだと思っている。
では、そこに領土問題がどのように記述されているか、となるとほとんどの人が知っていない。
ポツダム宣言の第8項は、「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」と記述している。
最近外務省の中国スクール(研修での言葉を中国語とし、後々中国関係の仕事に従事してきたグループ)で、大使を経験し現在はOBになっている人が私に次のことを言った。
「私は貴方の見解に異論があるのです。
第一にポツダム宣言の受諾に日本は署名していません。だから拘束力はありません。
第二に尖閣諸島の名前が明記されていません・」
私はこの発言を聞いて唖然とした。
多分、説明しても理解力がないのだからと聞き流した。
しかし、私に直接言う位だから、他の人にも言っているのであろう。
日本は1945年9月2日降伏文書に署名している。ここでは次の言葉から始まっている。
「下名ハ茲ニ合衆国、中華民国及「グレート、ブリテン」国ノ政府ノ首班ガ千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ発シ後ニ「ソヴィエト」社会主義共和国聯邦ガ参加シタル宣言ノ条項ヲ日本国天皇、日本国政府及日本帝国大本営ノ命ニ依リ且之ニ代リ受諾ス右四国ハ以下之ヲ聯合国ト称ス」 したがって、ポツダム宣言の署名がないという議論は全くナンセンスである、
次いで、尖閣諸島の名が明記してないという点は、「主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」となっているのであるから、明記していないことは、日本領と認めていないということになる。
現在連合国で最も重要な国の米国は、尖閣諸島の領有権問題では中立としている。ということは尖閣諸島は「吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」の中に入っていないことを意味する。
次いで「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルヘク」を見てみよう。
カイロ宣言での領土問題での言及がどうなっているかを知っている人はほとんどいない。
「満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコト」(注、「清国人ヨリ」の部分は英語ではfrom the Chineseとなっている)
日本は1895年1月14日、閣議決定で尖閣諸島の日本領を決定したが、この行為が「盗取シタル一切ノ地域」に入るかが争点となる、そうすると歴史的に、尖閣が中国領であったということがどの程度証明できるかの論になるが、今回はこの論に入るのは一応やめておく。しかし、中国が何を主張し、それをどう評価するかの論議が必要となる。
いずれにせよ、領土問題は過去どのような合意がなされ、それをどう解釈するかが最重要となる。 日本で尖閣問題を論ずる時、この部分が全く欠落している。
「尖閣諸島は日本固有の島であって、国際的に何の問題もない」の論は国際的に全く通用しない。
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孫崎 享
駐イラン大使
外務省国際情報局*長 1997年-1999年
駐ウズベキスタン大使(初代) 1993年-1996年
*米国のCIA,英国のMI6などに相当する
日本の情報局です。でも日本の場合は攻撃性
がないですね。
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