戦略は戦争で「相手を如何に壊滅させるか」から「如何にして戦争を避けるか」の術が必要ですね。
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孫崎 享 さんの記事です:
Date: Sun, 12 May 2013
Subject: 戦略論「勝利は、敵対する者との関係でなく、自分自身の価値体系との関係」
7日、上智大学で戦略論の第2回目(私の担当は5回)を実施した。
冷戦から今日に至るまで、世界で最も重要な軍事戦略は、核戦略である。
米ソ双方が相手国を何十回も何百回も完全に壊滅させる核兵器を持った。 戦略は「戦争で、相手を如何に完全に壊滅させるか」を求める術から、「如何にして戦争を避けるか」の術になった。
ここでは、「相手より優位に立つ」「相手をやっつける」という従来の戦略思想からの決別が必要だった。そして米国の戦略家は見事、それを成し遂げた。
フランス戦略家ボーフルの言がある。
「闘争を続けることの無益さ、精神的な損失の大きさなどを相手に悟らせることが出来るのなら対立は決着すると考えた」
私はボーフルの言を更に拡大解釈したい。「闘争を続けることの無益さ、精神的な損失の大きさなど」を「相手(国)に悟らせること」だけでなく、実は「自分(の国)に悟らせる」、これが極めて重要だ。
ボーフルの論を補足する上でシェリングの考え方(『紛争の戦略―ゲーム理論のエッセンスー』を紹介したい。
「戦略の学問的豊かさは、対立と相互依存が国際関係において依存しているという事実から生み出される。
”勝利“という概念は、敵対する者との関係ではなく、自分自身がもつ価値体系との関係で意味を持つ。
「”勝利“という概念は、敵対する者との関係ではなく、自分自身がもつ価値体系との関係で意味を持つ」。実はこの部分が戦略論で最も重要になる。
領土一つにしても、他の問題との比較において、常に最も重要であるというわけではない。 ポツダム宣言の時の日本はどうだったか。戦争終結の方がより重要だった。
サンフランシスコ条約の時はどうか。国際復帰が重要だった。
日中国交回復の周恩来と田中角栄はどうか。国交を結ぶことが尖閣問題の最終解決よりも重要であり、「小異を残し、大同につく」決断をした。
何を得るか、何を失うか、それとの関係で領土問題がある。
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孫崎 享
駐イラン大使
外務省国際情報局長 1997年-1999年
駐ウズベキスタン大使(初代) 1993年-1996年