35,000人の読者を持つロシア政治経済ジャーナルの北野氏が、チャベス大統領の人生とその背後の世界情勢、更に日本のことを絡めて分かりやすく解説してくれている。
是非、一読を。
(転載開始)
★「ブッシュは【悪魔】である!」反米の闘士・チャベスの死
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
2013年3月5日、ベネズエラのチャベス大統領が亡くなりました。
日本ではあまり知られていないと思いますが、ロシアではすご
い人気者です。
おそらく、プーチンの次ぐらいに人気のある政治家だと思いま
す。
なぜかというと、チャベスは「反米の闘士」だった。
ロシア人は、ソ連時代ずっと「米帝が世界の諸悪の根源」と教
育されてきました。
冷戦で完敗した今も、アメリカ大嫌いな人が多い。
それで反米プーチンの人気が高い。
チャベスは、プーチンよりもっと過激で、ブッシュのことを「悪魔」
とよんでいた
それで、ロシア人は、チャベスのことが大好きだったのです。
今回は、この「面白いオヤジさん」のことを書きます。
▼ウゴ・チャベスの人生
ウゴ・チャベスは1954年7月28日に生まれました。
両親は教師。
少年時代から野心家で、7歳のときには既に、「将来大統領になる!」
と宣言していたそうです。
夢はかなうものです。
中学生のとき、共産主義者の友達に影響され、社会主義・共産主義
に傾倒していきます。
中学校でそんなこと考えるなんてすごいですね。
私が中学生の頃は、「少年ジャンプ」などを読み、なんも考えていま
せんでしたが・・・。
高校卒業後、ベネズエラ士官学校に入学。
1975年、卒業。
そして、ベネズエラ軍少尉になります。
軍隊時代は空挺部隊にいました。
1989年2月、彼の人生を変える大きな事件が起こります。
ベネズエラの首都カラカスで貧困層の暴動が発生した。
軍が出動し、蜂起した人々にむけて発砲。
多くの死者がでました。
チャベスは、この軍の行動に強い衝撃を受けたのです。
1992年、中佐になっていたチャベスは、クーデターを起こし失敗。
逮捕されたものの、94年には恩赦で自由の身になりました。
その後、これまでの「武力革命路線」を改め、合法的な政治活動
で改革を目指すようになっていきます。
98年、「貧困層のための民主化革命」をスローガンに大統領選
を戦い、見事当選。
以後亡くなるまで約14年間ベネズエラを治めました。
▼チャベスの思想1 ~ 貧困層の味方
ベネズエラは、石油大国です。
原油生産量で毎年10位前後につけている。
人口は2860万人ですから、たいした量といえるでしょう。
しかし、「石油」は、ベネズエラの「長所」であると当時に「問題」
でもあります。
経済の石油依存度が高すぎるのです。
同国の輸出収入の約80%が石油。
そして、石油部門で仕事をしている人は全就労人口の0.5%にすぎ
ません。
そのため、富が偏在し、「貧富の差」が非常に大きいのです。
「資源はあるのに、貧富の差がものすごい!」
こういう問題はロシアにもあります。
たとえば天然ガス世界最大手ロシアの「ガスプロム」。
この会社は、「夢はかなう!」とかいってテレビCMを流していま
す。
しかし、このCMをみるたび、ロシア人は「ガスプロム社員の夢
だけはかなうだろうよ!」とムカついています。
一体、資源大国の民の不満とはなんでしょうか?
「資源は、国に属している。
資源は、国民の共有財産である。
だからその資源を売って得られる利益は、国民で平等に分配
されるべきではないのか?
一部の私企業が、利益を独占するのはおかしい」
という論理。
ともかく、石油大国ベネズエラは、貧富の差がものすごい。
社会主義者チャベスは、「石油があるんだから、貧困層をすく
えるはずだ!」と考えたのです。
大統領に就任するとチャベスは、
・貧困層のための無料医療制度整備
・地主の土地を、農民に与える農地改革
・為替管理
・価格統制
・石油公団への統制強化
などなど、要するに「社会主義路線」を突っ走ります。
だから、貧困層はチャベスを支持している。
それで、彼が亡くなったのを知った大衆は、泣いたりしているので
す。
▼チャベスの思想2 ~ 反米
世界的にチャベスは、「反米の急先鋒」として知られています。
社会主義者ですから「アメリカが諸悪の根源」と考えるのもわか
ります。
彼の特徴は、「思ったことを何でもかんでも口にする」ことでした。
たとえば、アメリカのアフガン攻撃について、こんな発言をしてい
ます。
<この宇宙に存在する最も邪悪な存在!
悪魔の象徴!
それは、ジョージ・W・ブッシュ>
うわ!
すごいですね。
チャベスの名を人類歴史に残した発言。
それは、06年9月20日の国連総会で起こりました。
こんなことをいったのです。
<この場所に昨日悪魔がいた。
いまだに悪臭が漂っている>
「悪魔」というのは、要するにブッシュ大統領(当時)のことです。
驚愕の演説、映像もみれます。↓
http://www.youtube.com/watch?v=g31GSu-LhZI
(●1分50秒くらいからです。)
アフガン、イラク戦争を泥沼化させたブッシュ。
しかも、イラク戦争の開戦理由だった「大量破壊兵器」はなかった。
だから、当時彼の評判はきわめて悪かった。
それでチャベスがブッシュを「悪魔」と呼んだとき、会場で笑っている
人もたくさんいたのです。
09年4月には、アメリカに対し、こんなことをいっています。
<アメリカは過去の原爆投下についてきちんと日本に謝罪すべきだ>
「まったくそのとおりじゃないか!」と思います。
しかし私たちは、韓国や中国のように、68年も前のことをウダウダい
うのはやめましょう。
ちなみにプーチンは、「反米つながり」でチャベスのことが大好きだっ
たようです。
テレビでこんなことをいってました。(涙目で・・・)
<ウゴ・チャベスは、生前既に、ラテンアメリカの独立と自由のシン
ボルになった。>
<彼は自国の発展を目指した。
しかし、発展が一般大衆の重荷になることを許さなかった。
彼は全力で、ベネズエラの数百万人の人々を貧困から救うために
努力した。>
<彼は、例外なくすべての国と友好的な関係を築こうと努力した。
しかし、決してベネズエラの国益を損なうことがなかった。
他国にすかれるために、自国民の利益を犠牲にすることは決して
なかった。>
特に最後の言葉は重要ですね。
日本の政治家は、「アメリカにすかれるため」「中国にすかれるた
め」「韓国にすかれるため」
にしょっちゅう自国民の利益を犠牲にしていませんか?
こういっても、私にクレームしてくる人はいないでしょう。
▼役割を終えて、チャベス去る
世界史、日本史を見ると、時々「時代の流れに乗って」歴史に
登場する人がいます。
チャベスが乗った「時代の流れ」とはなんだったのでしょうか?
私はいつも近現代史をこんな風にわけます。
1945~1991年、冷戦時代=米ソ二極時代
1992~2008年、アメリカ一極時代
内訳
1992~2000年、アメリカ一極時代前期 =ITバブルで空前
の反映
2000~08年、アメリカ一極時代後期 =
アメリカ一極時代は、多極陣営からの攻撃によって終焉す
る。
チャベスは、多極主義陣営の一員としてアメリカを攻撃しつ
づけた。
そして08年、アメリカの一極世界が崩壊した。
つまり、歴史的にみると、チャベスの役割は08年で終わった
のです。
今世界は、新たな時代に突入しています。
米中二極時代。
そして、他の勢力、たとえば日本、欧州連合、ロシア、インド
などは、
「米中どっちにつくのがお得なのかな?」
と考え行動しているのです。
新しい時代には、また新しい役者が登場し、人類歴史をお
もしろいものにしてくれることでしょう。
チャベスさんのご冥福をお祈りいたします。
最後にチャベスの歌を↓
http://www.youtube.com/watch?v=V5pc8HlQYVQ&NR=1&feature=endscreen
(めちゃラテン系・・・)
ちなみに
<アメリカ一極時代は、多極陣営からの攻撃によって終焉する。>
詳細を山盛り証拠つきで知りたい方は、こちらをご一読ください。
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<プーチン本はいろいろ出ているが、これが独特で面白い。>
(立花隆 「週刊文春」2012年7月12日号)
(転載終了)
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