耽美、神秘主義者の幻想小説家、澁澤龍彦の家と書斎周辺の写真を満載した作家論集である。遠い海の貝がら、ドクロ、熱帯の昆虫、拷問具のような貞操具。赤いビロードのカーテンの内側や、古い西洋戸棚の中に置かれ、作家の想像力を刺激して、その独特の世界観に彼を閉じ込めたであろう品々。サロメが生首を皿に乗せて、四谷シモンの奇っ怪な人形が関節をあり得ない風に屈曲させている。未来を映す水晶玉、未知の異国の宝石や短剣。動物やら悪魔やらの骨格標本。鎌倉の谷戸の林の中の洋館に住んで異世界を彷徨ったフランス文学者は自らの書斎をドラコニアと呼んだ。
短編「六道の辻」は京都六波羅密寺辺りにあった小野篁が自由に行き来した、異世界、地獄への入り口が舞台。真壁という人物が夜な夜な異世界を浮遊する舞台で死の舞踏を踊る。まかべは古代ヘブライ語と関連する言葉で異世界からの使者であることを暗示する。
想像力の源泉ドラコニアで、空を舞う古代ヘブライ人真壁、マカベの言葉の響きは、言語学的に検証されて、京都の異界と中東の砂漠は重ねられる。ドラコニアは異世界をつなぐ井戸とも言える。