モーツアルトの有名なオペラのひとつに『魔笛』があります。

 試練を経て、人格の成長が果たされることが描かれた、ちょっと神秘的な物語です。善と悪、光と闇、愛と裏切り…様々な対立項が、個性的なキャラクターに重ねられています。一応「男女の愛」がストーリーの中心になっていますが、それとて、男性性と女性性の成熟と結合いうような要素が見いだされます。

 こうした「人間のこころの原型」を豊かに含む物語りは強く人の心を捉えるもので、『魔笛』は古今東西屈指の人気オペラとなっています。

 でも今日とりあげたいのは、ある種‘模範的な’登場人物ではなく、狂言回しとでもいうべき‘おどけキャラ’です。

 彼の名はパパゲーノ。鳥刺しといって、鳥を捕えて夜の女王(陰の世界の原理を体現している人物)に献上し、報酬(食べ物らしい‥)を受け取るのを生業としています。パパゲーノはまぁ、絵にかいたような俗物で、考えていることといえば、「美味しい食べ物」のことか、将来可愛い嫁さんをもらい、子供たちが生まれればいいな‥ということぐらいなのです!それが成り行きでタミーノ(男性主人公)のお供として、共に試練を受けることになるのですが、それは報酬(似合いの女性)に釣られてのことで、決して精神修養のためではありません(笑)。ですから、さらさらまじめにやる気もなく、早々に落第してしまいます。

 ところが、報酬の女性パパゲーナを見せられて、一目でぞっこん(笑)に。でも、恋が成就しかけたところで「まだお前には早い」と、パパゲーナを連れ去られてしまったパパゲーノは絶望のあまり首をつって自殺しそうになるのですが(この辺りも超単純!)、魔法の鈴によって奇跡が起こり、ハッピーエンドを迎えます。

 この時歌われる恋のアリアが『パパパの二重唱』…他に類を見ない、とてもチャーミングなアリアです。なにしろ、パパパ…ですからね!アーとかラーで、メロディラインが歌われる歌(ヴォカリーズと言われますね)はみかけますが、パパパ…はねぇ…(笑)。

 モーツアルトはパパゲーノに、その役柄にふさわしいコミカルな曲の数々を与えています。『魔笛』の中のガス抜きのような!(笑)シリアスさの中に風穴を開けるかのような!

 前振りが長くなってしまいましたが、まずはこのアリアをお聴き下さいませ~!

                                   Buona Fortuna!

衣装も個性的です!
https://www.youtube.com/watch?v=87UE2GC5db0