あくる日、バスチアンは再びアイゥオーラおばさまに問いかけました。

 「ぼく、生命の水、どこをさがせばいいの?」

 「ファンタージエンの境」とおばさま。

 「だけど、ファンタージエンには境がないのでしょう?」

 「あるのよ。でもそれは、外にあるのではなくて、内にあるの。幼ごころの君が、すべてのお力をそこから受けておいでになって、しかも、ご自分はそこへいらっしゃれないところなのよ。」

 「そこを、ぼくは見つけなくちゃならないんですね。…もう、手おくれじゃないかな?」

 「そこを見いだすための望みは、たった一つしかないの。それが最後の望みなのよ。」

 バスチアンははっとして、「アイゥオーラおばさま―アウリンがぼくの望みをみたしてくれるたびに、ぼくはいつも、何か忘れていったんです。今度も、そうなるかしら?」

 おばさまはゆっくりとうなずきます。

 「ぼく、今度は何を忘れるんだろう?」

 「それは、その時がきたら、いってあげましょう。そうしないと、あなたはそれをつかまえて離すまいとするでしょうから。」

 「ぼく、何もかも失ってしまわなくちゃいけないのかしら?」

 「何一つ失われはしないのよ。みんな、変わるの。」

 「だったら、ぼく、きっと急がなくちゃいけないんだ。ここにいつまでもぐずぐずしてちゃいけない。」

 おばさまはやさしくバスチアンの髪をなで、こう言います。

 「心配しなくていいのよ。時間はかかるだけかかるものなの。あなたの最後の望みが目覚めたら、そのときは、あなたにわかるわ―わたしにも。」

 ―この日から確かに何かが変わりはじめました。けれどもそれは”ほんとうの変化がすべてそうであるように、それは草木の成長にも似て、静かに、ゆっくりと進んでいった”のでした…。

                                    Buona Fortuna!
引用、参考は前回に同じ