さて、以下が実際にお蔵入りになった原稿です。
繰り返しになりますが、良かったらご覧頂き、日本のメディアの実態と今後のジャーナリズムのあり方について考えて頂く一助にして頂ければ幸いです。




大学生が予測するワクチン後
ワクチン接種後「若者のリベンジ消費」が熱くなる分野は何か

「副反応で不妊」の可能性が気になる

【原田】今、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいますね。これから若い世代への接種も進んでいくと思いますが、皆さんは接種が始まったら受けようと思っていますか?

【A】私は受けるつもりです。副反応があるとも聞きますが、確率としては低いようなのでワクチンが怖いとは思わないです。それよりも自分がコロナに感染したくないという気持ちのほうが強いですね。

【B】私は、若い女性が接種すると妊娠しづらくなるという噂を友達から聞いて、それが本当かどうかは分からないけど、ちょっと考えるようになっちゃって。だったらワクチンはやめて、それでコロナになっても若者は軽症や無症状で済むんだったら、そのほうがいいかなとか思ったりしています。もう少し状況を見ながら考えたいから、今すぐって言われたら接種しないかな。ただ、今は大学で接種できるようにするという話もありますよね。全学生にPCR検査をする大学もあるので、その流れで進み出したら皆「早く接種して早く飲みに行こうぜ」と皆なりそうです。

【C】親からは「副反応で不妊もあり得るらしいから打たなくていいんじゃない?」という意見をもらったんですけど、周りの子はほとんど副反応の話を知らなくて、接種にも積極的みたいです。私は結構周りに流されちゃうので、皆が打つなら大丈夫なんだろうから私もってなりそう。

感染リスクと副反応どちらが不安か

【D】僕は早く接種したいと思っています。副反応の話を周りから聞いて怖くはなりましたが、コロナにかかるかもしれないという不安をずっと抱えていくより、接種の時だけ副反応の不安を抱えるほうが気持ち的には楽かなと。でも周りの子は副反応のこともあまり知らないし、とりあえず皆で接種したほうがいいんだろうから打っちゃおうって感じです。

【E】私は打ちたくないです。急いでつくったワクチンだし、アメリカでは副反応が少ないみたいですけど、人種によって違うのかもしれないし。色々な噂があって、何が本当なのかがよくわからないですよね。今後また違う副反応が出てくるかもと考えたら、コロナより怖いと思っちゃって。だから打ちたくないし、打たないんだったら家の中にいようって考えています。

【F】僕も他の人の様子を見ながらですけど、できるだけ打ちたくないと思っています。以前から副作用が怖かったんですが、原田さんのお父様の話を聞いて余計怖くなって。逆にワクチンのほうがコロナより怖いと思っちゃいますね。

【原田】そうか。F君は僕の身近にいたことで父がワクチン接種後に倒れたことを知り、ちょっとバイアスがかかってしまったのかもしれないね。それは申し訳ない気持ちです。重い副反応が出る人は数としてはすごく少ないようなのでうちの父親はたまたまの例かもしれません。
ワクチン接種による不妊の噂はあくまで噂なんだろうけど、不安が大きい分、ネット上とかではこうしたいろいろな噂が結構流れてはいるみたいだね。
一方、副反応の話は微熱と倦怠感くらいしかメディアでは流されず、もちろん多くの人は副反応が出てもそれくらいなんだろうけど、「皆で盲目的に接種しましょう」というワクチン接種を競うような流れになってしまってはおり、これはこれで問題な気もする。ワクチン接種は義務ではなく個人の判断でというルールになっているので、本当はきちんと個人が情報収集した上で若者も自己決断しなきゃいけないのだけど。
僕の父親の例は、そういう極端なケースもあるということを知ってもらって自己判断の材料にしてもらえたら。本来は国やメディアがもっと色々な情報を発信して、より多くの選択基準を与えてくれたらいいのになとは思っていますけどね。

接種しなかったら責められそう

【原田】ここまでの意見だと、皆さんの中には接種したくない人もいるけれど、大方の若者の間ではあまり副反応への怯えは生まれておらず、急速に接種が進みそうですね。「俺はいいや、若いからコロナで死なないわ」って打たない若者も結構多いのかと思ったら、そういう人は意外に少なそうだと。

【A】接種しなかったら責められそうっていうのもありますよね。また感染が拡大したら世論とかで「若者が打たなかったからこうなったんだ」って言われそう。

【B】もう少ししたらワクチンが免罪符になりそうな気がします。「私もう打ったから遊ぼうよ」とか、「打った人だけで飲みに行こう」とか。そういうことがどんどん広まって、接種していない子が疎外感を覚えるとか、遊びの幅や交友関係が狭まるとか、色々な問題が起きそうだなと想像しました。

【原田】今の若者は同調志向が強いし、SNSで周りの動向を気にする気遣い屋さんも増えていますから、ワクチンが免罪符になっていき、だからこそ、若者の間では接種が加速していきそうだと。接種するのは良いにせよ、動機が免罪符っていうのはちょっと不健全な気もするね。

【G】同調圧力みたいな話で言うと、僕も皆が打つんだったら打つと思います。ワクチンの副反応は自分にしか表れないけど、自分が打たないままでいてもしコロナにかかったら、部活のメンバーや周囲の人に迷惑をかけてしまう。だったらできるだけ早く接種したほうがいいなって思います。

【原田】そうした意見ももちろん尊重されるべきだけど、僕としては、副反応は確率が低くても自分の健康や命に関わる話なので、やっぱりまず第一は周囲より自分のことを考えて決断したほうがいいのではと、父の体験を通じて思いますけどね。じゃあ次に、接種が進んだら若者の行動はどう変わっていくと思いますか?

接種後は渋谷で遊ぶ若者が急増する

【A】私は2回打ったらもう遊びに行きます。旅行も行くと思います。

【F】打ったからって「イェーイ!」ってなるのは、僕は怖いですね。今は別の変異種が出てきているみたいだから、それには効かないかもしれないし。でもそこはワクチン免罪符で、渋谷で遊び回る若者はどんどん増えると思います。

【E】私も周りの子も、もしワクチンを打ったら即外出しちゃいそう。成人式の時も「私PCR検査やったから地元に帰れるし」みたいな子がすごく多かったので。それも、病院で検査したんじゃなくて安い簡易キットとかですよ。それでも大丈夫だと思っているぐらいだから、ワクチンならもっと大丈夫感が強まっちゃうんじゃないかな。

若者による「リベンジ消費」を予測

【原田】海外ではもう起こっているようだけど、若者による「リベンジ消費」が起こるかもしれませんね。接種したからって外で騒ぎ回るのはどうかと思いますが、リベンジ消費にはGDPが上がるなどいい面もある。本当はオンラインリベンジ消費が起こるのが一番理想かもしれないけれど。接種後、こんなことにお金を使いたいとか、若者にこんなものが売れそうといった意見はありますか?

【A】やっぱり化粧品じゃないですか、女の子は。私はずっとリップがほしいと思いながら「でもどうせつけないな」と見送ってきたので、早く買いたいです。マスクをしていたほうがメイクが楽でいいっていう女の子は一部だと思いますよ。私は早く顔を出したいです(笑)。あと、私も含めてコロナ太りした子が多いから、夏でも意外と露出が少ない、体型を隠すような服が流行るかも。運動しにジムへ行く子も増えそうです。

【E】ファッションはすごく売り上げが増えるんじゃないかな。今は新しい服をほしくても買わないでいる人が多いから。それと、リップはもう「落ちない」が大前提になる気がします。以前は落ちやすくても発色がよければ売れたけど、マスク生活で「落ちない」がいちばん大事になった。コロナ後もその気分は続くだろうから、落ちやすいリップは売れなくなると思います。

ダル着から抜け出せない

【D】アパレルだったら、リラックスファッションが流行る気がします。これまでずっと家にいて、ダル着(ゆるくダラけた服装)みたいな服ばかり着ていたから、皆その楽さに慣れてしまった。今後は外出の時も、楽でちょっとおしゃれな服、おしゃれなジャージやオーバーサイズな服がいいって思うようになるんじゃないかな。

【H】コロナ禍では外出用の服を買う機会が減りましたよね。そうなると、ファッションセンスのない人はいきなり外出用の服が必要になっても、どんな服を選んだらいいのかわからない。外部のセンスある人がコーディネートしてくれる、スタイリストサービスみたいなものが流行るかもしれません。

【I】僕は早くイベントに行きたいですね。夏フェスとか、若者はやっぱり皆行きたいんじゃないかな。あと、コロナ中に自転車でのデリバリーが増えて、ドライバーのバイトも体を鍛えたい人ばかりじゃなくて普通の人が多くなってきました。以前、マラソンが若者のおしゃれなスポーツみたいな感じで人気になりましたが、今度は自転車が来るのかなと思います。

オフラインゲーム市場が伸びる

【G】僕の周りでは、緊急事態宣言の期間中に大型バイクや車の免許を取る人がすごく増えました。友達から「大型バイクの免許取ってツーリング行こうよ」って誘われる機会も多くなった。だからこの2つは、また若者の消費が戻ってくるんじゃないかと思います。あと、今はおうち需要でオンラインゲームが流行っているので、そのノリのまま皆で集まれるようになったらオフラインゲーム市場がまた伸びるんじゃないかな。ボードゲームができるカフェで「やっぱりリアルで会えるっていいね」ってなると思います。

【B】外出する若者は増えそうですが、今と同じ生活を保ちたい人もいると思う。私は元から家にいるのが好きなので、コロナ禍では面倒な人付き合いや飲み会を「コロナが落ち着いたらね」って断りやすくなってすごく助かりました。私みたいにマイペースで自分の時間を確保したい若者は、接種後もオンラインとオフラインの使い分けをしていくのではと思います。「今日の飲み会はオンラインでいいよね」みたいに。

【原田】さまざまな意見が出ましたね。若者のワクチン接種が進んでいけば、「リベンジ消費」が起こるかもしれないし、コロナ禍で生じた消費で定着するものと定着しないものが切り分けられて「消費のニューノーマル」が明確になるかもしれません。マーケッターとして早くコロナを忘れ、若者たちの新しい消費やニーズに触れられる日がくることを願っています。