アジア初のアカデミー作品賞の候補になった韓国映画のパラサイト 半地下の家族。

万引き家族 の韓国版というと分かり易いかもしれない。

正直、かなり期待外れ。前評判的にもっと練られたモノであると想像していた。

テンポは良いので飽きない。万引き家族より飽きないと思う。

ストーリーは、半地下に住む貧乏な家族が、裕福な家庭に取り込んで・・・という映画の予告通りのもの。

まず、良いところは、貧乏物語を作らせたら日本は韓国に勝てない、ということ。

万引き家族よりこちらの方が面白い。

韓国を何度もマーケティング調査している立場から言わせてもらうと、貧乏の深刻さとリアリティが日本と韓国では違い過ぎる。

超格差大国の韓国と、格差が出てきているとは言え、絶対的貧困率が低い日本との差だろう(日本は平均値が高い分、相対的貧困率は高いが)。

半地下に住む家族とか、半地下だから大雨が降ると家の中がびしゃびしゃになってしまうシーンとか、万引き程度で食えてしまう日本と違い、韓国の方がより深刻で、この手の貧乏ストーリーはもはや成熟国家になってしまった日本では、今後、世界を席巻できるものは描けないだろう。

ネタばれになってしまうが、最後、自分と似た境遇の貧しい暮らしの殺人犯の体臭が臭いというリアクションをとった自分の雇用主を主人公の父が刺してしまうシーンが出てくるが、

半地下に住んでいることによって染みつく体臭があること

体臭が差別にもなり、コンプレックスにもなること

体臭差別が殺人の動機にもなること

これは今の日本人監督には思い浮かばないものだろう。

とは言え、韓国ドラマによくあるむちゃくちゃな映画でもある。(ちなみに、僕は結構韓国ドラマウオッチャーである。一応、世界で若者研究をしているので)

とにかくドラマティックな展開にしたいがために、無理矢理な設定が多すぎる。

乱暴。知恵を絞っていない。伏線を回収しない。

例えば、貧乏な家族が全員家族ということを隠し、家庭教師やらドライバーやらお手伝いやらで富裕層家庭に入り込むのだが、皆地頭が良く、起用で富裕層家庭を信用させるが、そうはうまくいかない。もっと彼らの地頭や器用さの根拠や背景が描かれていなければ説得力がない。スラムドッグミリオネアであれば、ストリートで生き抜く知恵が、クイズ大会で活きている背景を見事に描いているが、この映画はドラマティックであればいいので人物描写がほぼない。雑。制作者としての逃げ。

例えば、妹だけ唯一殺されるが、これも一番罪の少なく見える彼女を殺した方からショッキングだ、という理由以外は見当たらない。殺人犯が妹を恨んでいたわけでもない。

まるで 映画 君の膵臓を食べたい で、いきなりヒロインが通り魔に刺されるシーンがあるが、

あれみたい。犯人には何の動機もない。彼女が殺される必然性もない。ただ、客に衝撃を与えたいだけ。制作者としての逃げ。

こんな感じでかなり薄っぺらい映画である。

カンヌでパルムドールをとったと言うが、万引き家族がとっていることを考えると、

カンヌがこうした 格差 を描くものが好き、以上、という感じがする。

このように過剰評価されている映画。監督の次回作に期待したい。