57.「山ん中の獅見朋成雄」舞城王太郎 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

57冊目

「山ん中の獅見朋成雄」

舞城王太郎

講談社文庫



山ん中の獅見朋成雄 (講談社ノベルス)/講談社
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中学生の獅見朋成雄(しみともなるお)はオリンピックを目指せるほどの駿足だった。


だが、肩から背中にかけて鬣(たてがみ)のような毛が生えていた成雄は世間の注目を嫌い、より人間的であることを目指して一人の書家に弟子入りをする。


人里離れた山奥で連日墨を磨り続けるうちに、次第に日常を逸脱していく、成雄の青春、ライドオン!




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舞城作品再読の一環として読んでみました。




この本を選んだ理由は、内容をあんまり覚えていなかったから、だったりします。




まあ、今ほど舞城熱が高くなかった頃(というか、ミステリ舞城の印象が鮮烈すぎて、純文舞城にまだピンと来てなかった頃)に読んだ「阿修羅ガール」や「好き好き大好き超愛してる」も結構内容が忘却の彼方にあって、近いうちに再読しなきゃならないなとは思っているのですが、それらの作品をうっちゃってこの本を選んだのには理由がありまして。




というのも、舞城さんの小説で「SPEEDBOY!」というのがあってですね。


SPEEDBOY! (講談社BOX)/講談社
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この作品のあらすじはこんな感じ。




「孤独だからいいんだ。孤独だからこそ速くなれる」


友人、家族、町、世界、そして愛――すべてを置き去りにして鬣の生えた少年スプリンター成雄は速さの果てを追う。


そこに何があった?何が見えた??――誰がいた???


疾風怒涛、音速も超え、すべての枠を壊しマイジョウオウタロウの世界は、限界の向こう側へ。





・・・・まあ、もうお分かりかと思うのですが、双方ともに『成雄という背中に鬣の生えている足の速い少年が主人公の話』なわけで、しかも読んだ時期が結構近かったので、記憶が混同していたんですよね。




だから、とりあえず片方読んでみるか、と読んでみたわけです。




読後の感想としては、「あー、混同しまくってたわー。俺、混同しまくってたわー」というのに尽きます。




地獄のミサワ風だとか誰が気付くんだよ、と書いてる本人が痛感しているのでそこはあっさりスルーするとして・・・




速く走ることを追及しまくって音速を超えるわ空中も走るわの完全ファンタジー話だという記憶ばかりが残っていたのですが、それはすべて「SPEEDBOY!」の成雄だったわけで。




「山ん中」の方の成雄は、もう少し地に足がついてました。




まあその内容はというと、舞城作品の感想を書くときに毎回言ってるような気もするのですが、なかなか言葉で表現できるものではなく。




乱暴にまとめると、アイディンティティを模索する少年の話、てな具合になるんでしょうけど、それだけでは言い表せない要素ももちろんモリモリあるんですけどねぇ。




最近の舞城作品に馴染んでしまった身としては、結末で物語が収束しきれてないんじゃないかなぁ、と若干の不満というか、据わりの悪さみたいなものも感じてしまうのですが、そこはそれ。




スッキリしたオチにすることだけが小説じゃないし、まだまだ未来が未確定で、まだまだどんどん先に突っ走っていく成雄の物語としては、こんな感じがちょうどいいのかもしれないな、と思ったり思わなかったり。




なんにせよ、「SPEEDBOY!」の方も再読しないとなぁ・・・