41冊目
「聖女の救済」
東野圭吾
文春文庫
- 聖女の救済 (文春文庫)/文藝春秋
- ¥710
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資産家の男が自宅で毒殺された。
毒物混入方法は不明、
男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。
難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に魅かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが…。
驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作。
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ガリレオシリーズ第5弾、ですね。
そして、「容疑者Xの献身」以来、2度目の長編です。
前作「ガリレオの苦悩」でも思ったのですが、内海刑事が優秀すぎてちょっと湯川の出る必要性が薄まってきてるような気が・・・。
まあ、内海の気付くポイントというのは、「男性目線では気付きにくい点」なわけで、湯川が活躍できる分野ではないのは構成上よく分かるのですが、それにしてもちょっと優秀すぎるかも。
普通の推理小説(湯川的なブレインがいない推理小説、あるいは警察小説)ならば、内海が気付いた違和感を掘り下げていって、時間はかかるものの解決、という道筋でも充分アリなだけに、『ガリレオシリーズ』という予定調和の中に内海を入れてしまったことが、果たしてプラスなのかマイナスなのか、というのがまだ判断つかないですね。
少なくとも、湯川の出番を減らしているのは間違いないし。
んで、そういう目線で見ていると、この殺人でこのトリックならば、湯川はそんなに必要ないんじゃないかな、なんて思ってしまうんですよねー。
結果的に、湯川はピンポイントで疑わしき所を調べさせて犯行が可能なことを証明しましたけど、虱潰しに調べていっても結局真相は暴けたんじゃないだろうかと。
そして、更なる被害者が生まれる可能性の低いこの事件では、湯川は時間短縮と劇的さを演出する役割にとどまってしまったような気がするんです。
まあ、だからどうだということはないんですが、「探偵ガリレオ」や「予知夢」みたいな、『湯川でしか解答を導き出せない事件』のほうがガリレオシリーズとしては相応しいんじゃないかなぁ、とは思いました。
あと、「殺人事件が発生→犯行手段が分からない→しかも最有力容疑者には鉄壁のアリバイが!」的なミステリらしいミステリを読んだのが『久しぶりだな』なんて思ってしまった自分に少し反省しました。
最近はミステリ自体が広範化してしまったけど、たまにはこういう典型的なミステリも読まないといけないですねぇ。