5冊目
「海の底」
有川浩
角川文庫
桜祭りで開放された米軍横須賀基地。
停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が異変に気付いた時、周囲は地獄絵図と化していた。
巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、次々に人を襲い、捕食していたのだ。
自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、艦は無数の甲殻類に囲まれているため身動きが取れず、救助の目処も立たない。
一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく……。
ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンターテイメント小説。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「空の中」に続いて、自衛隊三部作ふたつめ。
海から巨大ザリガニが大量発生、なんて言うとまるでB級パニックアクション映画みたいで、もしハリウッド映画なら主人公が重火器を振り回して皆殺しにしていくんでしょうけど、幸か不幸か舞台は日本。
通報されて駆けつけるのは警察や消防だから、彼らには火力がほとんどない。
ニューナンブ(警察官の持っている銃)はあるけど、甲殻類に致命傷を与えるには至らない。
そうなると自衛隊の出動しかないのだけれど、只でさえ出動に手間の掛かる自衛隊であるのに、その上「敵兵」ではなく「未確認生物」が相手だということで、内閣を始め上層部は会議を続けるばかり。出動の号令はなかなか出ない。
その間にも機動隊を中心とした警察・消防の合同チームは決死の覚悟でザリガニを食い止め続け、手をこまねいている日本に痺れを切らした米軍は、単独での市街地爆撃を画策する。
この一連の流れがすごいリアルだったのに衝撃を受けました。
あー、そうそう、多分こんな感じの動きになるんだろうなぁ!と、膝を打つことしきりでした。
そのリアリティー溢れる緻密な展開に興奮しつつも、これが我が国のスタンダードケースなんだよなあ、と少し忸怩たる思いも抱きましたが…。
有川さんは自著のことを「大人のライトノベル」とよく称されていますが、まさしくその通りだなと深く納得できた名作でした。
……あ、そうそう。物語は、潜水艦内部と警察のザリガニ対策本部が交互に描かれる形式なので、潜水艦内部でも自衛官と少年少女たちのアレコレがあるんですがね。
てか、そっちをメインにして語る人も多いと思うんですけどね。
私的には外でのアレコレの方が魅力的だったので、ばっさり割愛させて頂きます。
いや、潜水艦内部が面白くなかったわけではないんですけどね…(←手遅れの言い訳)