69.「ゴーグル男の怪」島田荘司 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

69冊目
「ゴーグル男の怪」
島田荘司
新潮社




「そいつ、両目の皮膚が溶けたように真っ赤なんですよ…」

煙草屋の老婆が殺された濃霧の夜、ゴーグルで顔を隠した男が闇に消えた。

死体の下から見つかった黄色く塗られたピン札、現場に散乱する真新しい50本の煙草。

曖昧な目撃情報、続出する怪しい容疑者、奇怪な噂が絶えない核燃料製造会社。


そしてついに白昼堂々、ゴーグル男が出現した…。




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NHKで「探偵Xの挑戦状!」という視聴者参加型のミステリードラマがありまして、この「ゴーグル男の怪」は去年の夏に放送されたものを大幅加筆した作品です。



あらすじで言うと「奇怪な噂が絶えない核燃料製造会社」というのがまるまる加筆部分で、「煙草屋で起こった殺人事件やゴーグル男の目撃情報の話」と「核燃料製造会社で起こった臨界事件と会社付近に住むひとりの職員の話」という、ふたつの縦軸が交互に語られる、島田作品お馴染みのスタイルになっています。



ストーリーは基本的に番組と同じなんですが、もうひとつ縦軸が加わった影響で物語全般に深みが加わった、のかどうかはオチを知っているので何とも言えませんねぇ。



ただ、いつもの島田作品とはちょっと違うなとは思いました。



しかしまあ、番組が8月ってことは依頼自体はもっと前から受けていたわけで、ああ、きっと福島の事例を見て更なる話の膨らみを思い付いてしまったんだろうなぁ。そこで、不謹慎だとかなんとかいう曖昧な理由で退くお人じゃなさそうだもんなぁ。なんて思ってみたり。



色んな意味で、やっぱり島田御大はすげーな、と思った1冊となりました。