33.「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

33冊目
「オーダーメイド殺人クラブ」
辻村深月
集英社




中学2年生。
等身大の自分を認めようとせず、空想世界にのめり込んだり死ぬことに憧れを抱いたりする「中二病」真っ盛りのお年頃。



小林アンは、そんな中学2年生。
クラスではヒエラルキーの上位に属する「リア充女子」だが、アイドルや恋愛話に一喜一憂する友人たちを見下し、少女趣味な母親をバカにし、「みんなセンスがない」と内心では思っている。



同世代の少女ふたりが飛び降り自殺をしたと思しき様態で発見された、というニュースも、アンにとってはセンスがない行為にしか見えない。



たったひとつである自分の命なのに、なぜそのようなありきたりな使い方しかできないのか。
飛び降りる姿を目撃されていないのも、考えがたい愚行だ。
そんな、ワイドショーですら3日も経たずに飽きてしまうような死に方なんて、絶対にしたくない。



まだ誰もやったことがなく、ワイドショーが何日も特集を組み、数多くの模倣者が生まれ、そのような模倣が行われる度に「オリジナル」として何度も話題になるような劇的な死に方しか、私はしたくない、と。



しかし現実には、アンはただの中学2年生。
オリジナリティ溢れる死に方など思い付かないし、ひょんなことから友人の不興を買い無視されたり、子供扱いしてプライバシーを尊重してくれない母親と言い争いをしたりと、つまらない日常を過ごしている。



そんなある日、アンは、自らが「昆虫系男子」と命名した、仲間内の男子としか喋らないイケてないグループに属するクラスメイト・徳川勝利が、河川敷で小動物らしきものの入ったビニール袋を何度も踏みつけているのを目撃する。



その姿に自分と近いものを感じたアンは、徳川に自分を殺して欲しいと依頼する。



かくしてふたりは、「被害者」と「少年A」になるべく、理想の殺人計画を描き始める・・・。




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10日ほど前の話になりますがこの作品、直木賞候補作になるも受賞には至りませんでした。



残念です。



とはいえ、あらすじからも分かるように全世代が面白いと思えるような内容ではないし、そもそも結構お年を召しているであろう選考委員の方々(失礼)には「中二病」や「リア充」がきちんと理解できるのかどうか定かではないので、ぶっちゃけ受賞はしないだろうなとは思っていましたがね。



閑話休題。



ああ、昔の自分がいる。



それが、読んでいて最初に抱いた感想でした。



ええ、私も中高の頃にがっちり罹患してましたよ、中二病。
ちょうどサイコキラーブームだったのもあったのでしょうが、「完全自殺マニュアル」を読んだり、「マーダーケースブック」を毎週購読したり、新本格ミステリ小説ばっかり読んでたり。



よく親は何も言わずにいたなと不思議に思うほど、当時の私は死への憧れみたいなものを抱いて日々を暮らしていたような気がします。



ただ私は、そんな憧れに対しても勉学や部活同様に一生懸命やれなかったので、何の行動も起こさぬまま、知らぬ間に病は癒えてしまいました。



しかし、アンは違います。
具体的な行動を起こそうと計画を立てます。



稚拙な行動です。
周囲との折り合いが悪くなればなるほど計画に没頭していく様子は、明らかに現実逃避です。



でもそれは、
かつて私がやらなかったことで。
かつて私ができなかったことで。



読んでて痛々しく、苦々しく思いながらも、どこかで羨望に近い感情を抱いてしまいました。



しかし、私はもう知っています。



その思考が、感情が、熱量が、どうしようもないほどに一過性のものだということを。



一度目が覚めてしまえば、
一度熱が冷めてしまえば、
二度と戻れない夢の中ような時代だということを。



だからこれは、大人のための青春小説です。



是非とも、大人に読んでほしい青春小説です。



特に、自分が昔、熱に浮かされていたという自覚のある人には、とてもツボにはまる作品なのではないかと思います。





うーん、勢いに任せてつらつらと書いたものの、支離滅裂っぷりがハンパないなぁ。



ま、とりあえず、とても面白い作品でした。



また折を見て再読します。
何度でも。