2冊目
「ツナグ」
辻村深月
新潮社
突然死したアイドルに。
癌で逝った母に。
喧嘩したまま亡くなった親友に。
失踪した婚約者に。
死者との再会を望むなんて、生者の傲慢かもしれない。
間違いかもしれない。
でも――喪ったものを取り戻し、生きるために会いにいく――。
4つの再会が繋いだある真実。
新たな一歩を踏み出す連作長編小説。
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色々と考えさせられる物語でした。
死者との面会を叶えてくれる人がいる、という噂を聞きつけ、苦労の末コンタクトを取り、ダメ元で依頼をしてくる人たち。
ようやく実現した面会を終え、胸に希望が灯った人。
はたまた絶望にうちひしがれる人。
そういう悲喜こもごもの人間模様を楽しむというのが、この物語の楽しみかたのひとつです。
実際に途中までは、「そういう物語」として描かれていますし、読んでいる側からしてもそういう認識で読んでいく人が大半だと思います。
しかし物語が終盤に差し掛かるにつれて、ひとつの疑問が湧いてきます。
それは、『死者との面会という行為は正しいことなのか』ということ。
その命題が提示された後からは、物語の様相ががらりと変わってしまいます。
その手法はさすがですね。
依頼をしに来た人たちは様々な想いを抱いて死者に会いに行くわけですが、その想いというのは本当は生前に伝えておかなければならなかったもので。
だからこそ伝えられなかった自分を悔いて再会を求めているのだろうけど、本来それは二度と叶わない筈の願いで。
叶う筈のないその願いが奇跡的に叶ったにも関わらず、なかなか言葉を切り出せなかったり、この後に及んで駆け引きを打って取り返しがつかなくなったり。
かくも人の業は深いものか、と痛感するような物語でした。
そんなことを考えながらも物語に没頭し、感動したりしている私も、おなじく業が深いなと思いましたけどね。