96.「オールスイリ」 | 町に出ず、書を読もう。

町に出ず、書を読もう。

物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

96冊目
「オールスイリ」




文藝春秋社の誇る老舗雑誌『オール讀物』の創刊80周年記念として編集された特別号です。



タイトルの通りスイリ(ミステリー)ものばかりを収録していて、しかもかなり良い感じの布陣だったので買ってみました。



ざっくりと内容の感想を書いていきたいと思います。


エッセイの
「桜庭一樹のクイーン日記 どるりーれーんにおどろいた」桜庭一樹

と、

「ミステリィについて思うこと」森博嗣

に関しては割愛しますが。




というわけで、収録順に。




「軽い雨」米澤穂信


トリック面でも習作だけど、最後に明かされる犯人の動機にやられた。


冒頭のホラー風な描写がなんか良い。


連作短編にできないこともなさそうだけど、どうなるのかな?





「望郷、白綱島」湊かなえ


湊さんの作品は「告白」と短編数作しか読んでないのだけど、毎回違う印象を受けるのは何でだろう。


田舎を出ていった者と、田舎に留まる者の間にある考え方の違いがとてもリアルだった。





「嫉妬事件」乾くるみ


乾さんの作品は初読なのだけれど、こういうのが得意なかたなんでしょうか。


どんな結末になるのかと思ったらこんなオチとは。


そういう目でみれば事件からしてそっち側だよねぇ。





「芹葉大学の夢と殺人」辻村深月


痛い話だなぁ。


これを読んで思い出したのが「凍りのくじら」。

理帆子と若尾の関係にちょっと似てる感じで、それを更にバッドエンドにしたような話でしたね。


しかし真面目な顔でこんな夢を語られたら、普通はドン引きするよなぁ…





「森娘の秘密」奥泉光


奥泉さんも初読でした。


シリーズもののようでしたけど、特に問題なく読めましたね。


クワコー先生の情けないキャラクターが和みますなぁ。





「少年探偵団と神様」麻耶雄嵩


未来が判ると豪語する「神様」というアダ名のクラスメイト、という設定が印象に残りすぎて事件が霞んでしまうなー、とか思ってしまいました。


そしたら「神様ゲーム」と関係してくる話だそうで。


あらら、それ読んでないわ。


この短編としては「神様ゲーム」を読まなくても成立してるんですが、やっぱり気になるのでいずれ読んでみたいです。





「アポロンのナイフ」有栖川有栖


火村シリーズの短編。
有栖川さんらしいキレイで深い話でした。


最後に明かされる動機が何とも強烈でしたね。


共感してはいけないんだろうけど、気持ちは分かるなあ。








全体的に粒ぞろいで、かなり楽しめました。


また同じような企画をやってもらいたいです。