92冊目
「身代わり」
西澤保彦
辺見祐輔が飲み会を開催した日の深夜、その飲み会に参加していた後輩が公園で女性を包丁で襲ったが反撃され、揉み合ううちに自分の腹部を刺して死亡した。
後輩の異変に気付けなかったことを悔いる祐輔は、独自に事件を調べ始める。
その数日後、女子高校生が自宅で絞殺される事件があった。
しかもその傍らには巡回中の巡査の絞殺死体。
同じ凶器が使われていると思われたため同一犯人の仕業だという意見が濃厚だが、二人の死亡推定時刻には四時間もの開きがあった。
ふたつの事件は思わぬところで交錯しはじめる――。
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最近は記事の簡略化をモットーにしているので、裏表紙とか帯に書かれているあらすじをそのまま転載することがままあるのですが、さすがにこの帯のあらすじを転載するには気が引けたのでオリジナルで軽くあらすじを書きました。
だってネタバレも甚だしいんですもの。
物語の折り返し地点を越えたところで明かされる話があらすじに載ってちゃいかんだろ。ということで。
とはいえ、女子高校生と巡査が殺された事件は物語に必要不可欠な要素ではあるんです。
ただ、前半部分ではほぼノータッチなので、しかたないような気もしましたが。
っていうか、一旦全文を丸写ししたんですが、ミステリ読みとしての良心が発動して自粛しました。
折角なので帯の裏に書いてあったあらすじをこの記事の最後に載せておきます。
このあらすじを見ずに本書を読まれたかたに判断して頂きたいと思います。
さて、裏話はこのくらいにして内容の話をば。
この物語は、『タック&タカチシリーズ』の長編6作目に当たります。
前作「依存」が出てから10年以上経つ計算になりますね。
まあ、私は「依存」を文庫化してから読んだので、そんなにインターバルが開いてる認識はなかったんですがね。
このシリーズはあらすじでも挙げた辺見祐輔(ボアン先輩)と、タックこと匠千暁、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由起子の四人がメインとなるミステリなんですが、冒頭で、タック・タカチ・ウサコが最近音信不通だというのが明かされます。
これはひょっとして、いつもは脇役に徹しているボアン先輩の独壇場となるのか、と期待したのですが、やっぱりおいしいところはタックが持っていくんですなぁ。
タックが嫌だと言っている訳ではないのですが、たまにはボアン先輩大活躍なのも見てみたいなと思ってみたり。
そういえば社会人になったボアン先輩とウサコしか出てこない短編とか読んだことあるような…。
昔の記憶なので曖昧ですが。
閑話休題。
帯にあるあらすじに対して文句を言っていた口で何を言うか、と思われるかもしれませんが、この本の内容を語るのにとても相応しい言葉が帯の表紙側(あらすじは裏表紙側にあったのです)に書いてあります。
曰く、『身代わりの、身代わりの、身代わりは、身代わりの、身代わりだった――!?』
その通りの内容です。
どの『身代わり』がどの登場人物なのかというのは、ややこしくて照会していませんが、帯に書いてあるので多分これで正しいのだと思います(笑)
雑多なものに思われたふたつの事件の概要が、徐々にひとつに纏まっていく様はとても爽快でした。
最終的に「それしなないよなぁ」と思ってしまったことは事実ですが、それは別に瑕疵ではなく、ロジカルな物語であった証左みたいなもんだと思います。
はてさて、次の長編が待ち遠しいところですが、いつになることやら。
「チョーモンインシリーズ」もかなりご無沙汰なので読みたいのですが。
西澤さんのますますのご活躍(本が出版されるという意味で)をお祈りすると共に期待したいと思います。
というわけで、最後に、帯に書いてあったあらすじをそのまま転載しておきます。
安槻大の高瀬千帆と匠千暁は元同級生の巡査の葬式に出席していた。
高校二年生・鯉登あかりが自宅で殺害され、だが、おかしなことに彼女の遺体のすぐ脇に巡回中の明瀬巡査の遺体があったのだ。
二人の死亡推定時刻には四時間の差があり、殺害方法はともに後頭部殴打の後に絞殺。
あかりは妊娠三ヶ月だった。
警察が調べを進めると、彼女は成績もよく、作家志望で『身代わり』というポルノまがいの作品を書き、小説のモデルと見なされる図書館司書・芳谷朔美とトラブルを抱えていた――。
一方、その五日前の深夜、辺見祐輔の後輩・曾根崎洋が公園で女性を包丁で脅しながら性的暴行を加えようと襲いかかったが反撃され、その弾みで自分の腹部を刺して死亡する事件があった。
女性の行方は不明。
曾根崎をよく知る辺見はなには腑に落ちないものん感じた。