62.「魔界探偵冥王星O ペインのP」越前魔太郎 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

62冊目
「魔界探偵冥王星O ペインのP」
越前魔太郎





『金星堂』


そう呼ばれる街の郊外にひっそりとたたずむ洋風の一軒家には、二人の姉妹が住んでいる。



姉の小金井明日葉と、妹の小金井今宵。



彼女たちは、人間の上位種である【彼ら】が関わっている事件を解決することを生業としている。



人間である彼女たちが【彼ら】と渡り合える理由。その秘密は彼女たちの過去に隠されていた。



幼い頃、出掛けていた明日葉を除いた家族3人のいた家を【ゼペット】という【彼ら】が襲撃。両親を殺し、今宵から視覚味覚嗅覚痛覚を奪い去っていった。



親戚に引き取られた彼女たちのもとに再び表れた【ゼペット】は養父養母を殺し、「以前貰い受けた感覚のうち、痛覚が不要になった」と今宵から奪った痛覚をなぜか明日葉に返したのだという。



その後、彼女たちが【先生】と呼ぶ【ジル・ド・レ】という【彼ら】に拾われた2人は、感覚の不足や余剰を利用した能力を手に入れ、現在に至る。



『金星堂』を作り活動をしているのは、もちろん【ゼペット】を探し出して復讐をするため。



ひょんなことから彼女たちと知り合った遼一は、浮世離れしていて危なっかしい彼女たちを心配し、仕事を手伝うようになる。



その時、明日葉から「絶対に関わってはならない男」の事を聞く。



人間からの依頼を受けて【彼ら】の起こした問題を解決する金星堂とは正反対に、【彼ら】からの依頼を受けて人間社会で活動する男。



その男のことを語る時の苦々しい表情を見れば、明日葉が男を忌み嫌っていることがよくわかる。



その男の名はもちろん



【冥王星O】





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異能をもつ小金井姉妹と【彼ら】との戦いを描いた連作短編風の物語です。



これまでの「V」や「H」のようなハードボイルド路線とも、「W」のようなジュヴナイル路線とも違い何だかとってもラノベ路線。



女子率かなり高いし。



【彼ら】側に立つ【冥王星O】とは真逆の位置に立つのは『金星堂』の小金井姉妹。



太陽系で最も外側にある(海王星が一番外側にある時もあるんですがその辺は細かいこと言いっこなしで)暗黒の惑星・冥王星。しかも今では惑星からも外されてしまった冥王星。



それに対するのは光かがやく明星・金星。



その構図がうまいですね。



登場する【彼ら】も異形異能のオンパレードで、自分の中の【彼ら】像を修正せねばならないほどでした。



しかしまあ上にも書きましたが、路線が全然違うので講談社ノベルズ側のものしか読んでない人からすると戸惑ってしまうかも。



今後の作品で、【冥王星O】視点から敵として小金井姉妹が登場したりしても面白いな、とは思いますがはてさてどうなりますことやら。