49冊目
「赤の女王の名の下に THANATOS」
汀こるもの
捜査資料の漏洩に、少年犯射殺、という不祥事と醜聞のダブルパンチで、捜査責任者だった湊俊介警視正は閑職に回されてしまう。
湊のその境遇と、初めて聞かされた生い立ちに同情した高校生探偵・立花真樹は、警察トップにも影響力のある財閥・神納家のパーティーに湊と共に赴く。
神納家と懇意にすることで復権の筋道を立てると共に少々の醜聞で失脚したりしないよう足場を固め、あわよくば箱入り令嬢の婿の座もまでも視野に入れる湊と真樹。
だが、『案の定』そうはいかない。
見るも無惨な死体となって発見される令嬢。醜聞を嫌い事件を表に出さないよう希望する神納家の人々。
湊もまた、神納家の方針に従うことにするのだが・・・
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これまでのタナトスシリーズでは、あくまでも蚊帳の外、本筋の外側に居た湊さんですが、前作「リッターあたりの致死率は」でちょっと出番増えたな、と思ったら今回いきなり主役です。
簡単に言えば、真樹の協力のもと、警察組織での復権を目指す湊、ということになるんですが、そもそも立花兄弟がやらかしたことが閑職に回された原因のほとんどを占めるんですね、これがまた。
それもあって本気モードな湊と、やや冷め気味でしかも全開の湊にちょっと引いてる真樹、という対比が笑えます。
物語の本筋もおもしろかったのですが、それにも増して湊の過去のエピソードや、美樹の出番が少ないせいで減少した魚蘊蓄の代わりに大量発生した最近の映画・テレビ・小説・マンガ系のネタがかなりツボでした。
何はともあれ晴れて湊も『内側』の人間となりました。
これからの展開が楽しみです。