47.「密室殺人ゲーム2.0」歌野晶午 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

47冊目
「密室殺人ゲーム2.0」
歌野晶午




ダースベイダーのマスクを被った『頭狂人』

ジェイソンのようなホッケーマスクを被りオモチャの斧を振り回す『aXe』

黄色いアフロのかつらに渦巻きメガネの『伴道全教授』

自分の姿はさらさず水槽のカミツキガメのみを映す『ザンギャ君』

同じくボロボロの外車の写真を映す『044APD』



この奇妙な五人は「密室殺人ゲーム」のメンバー。



彼らは、各々が思い付いた「とびきりのトリック」を出題し合うという推理合戦を、日夜行っている。



と言っても、五人は一堂に会しているわけではない。



自宅の部屋にカメラとマイクをセットし、インターネット上でAVチャットをしているのだ。



そして最も特殊な点は、出題者がトリックを披露するために殺人を実行するということ。



彼らが望むこと。
それは、メンバーの誰もが白旗を上げる鮮やかなトリックを実行すること。



そして、出題者が披露した自信満々のトリックを鮮やかに解き明かすこと。



その為にはどんな労苦も惜しまない。



さあ、次は誰が殺しますか?・・・




・・・・・・・・・・・・・・・




「密室殺人ゲーム王手飛車取り」の続編にあたる作品です。



「王手飛車取り」を読んだ人からすれば、『続編なんてできるの?』と思ってしまうでしょうが、そこはネタバレ自粛で。
読んでみれば分かります。



今回のもかなり面白かったです。



前回同様、物語の条件下で出来得る限りのトリックが披露されています。



その手法はただひたすらにすばらしい。



ただ、個人的な面白さのピークは最初の事件であり、ある意味序章程度の意味しか持たないとも言える、『Q1.次は誰が殺しますか?』だったりします。



ラストの怒涛の展開がすばらしい。



そう思ってしまう時点で「密室殺人愛」が低いのかもしれない、とちょっと反省もしています。



ただこの作品は、勿論前作を読んでからの方が楽しめるのですが、その分「意外な展開」に驚けなくなってしまってた、というのも事実です。



特に今作のラストトリックの真相が何となくですが分かってしまい、解答が出された時も「なるほど、そうきたか」と低めのテンションで受け止めてしまったことは残念でした。



何に対して残念かと言えば、そんな読み方をしてしまっている自分に対してですが。



ともあれ、素晴らしい作品であることは間違いありません。



年末のミステリ番付で上位にランキングされたり、先日発表された「本格ミステリ大賞」を受賞したりしてるのも頷けます。



作者のコメントとして、「映画『ソウ』のように、同じ世界観でも、少し視点をずらすことによって奥行きが広がる。そういうものをやってみたかった」とありましたが、この「密室殺人ゲーム」の世界にもまだまだ奥行きがあると思います。



是非続編をお願いしたいです。