10冊目
「凶宅」
三津田信三
小学四年生の日比野翔太が家族と共に引っ越して来た家は、山を切り開いて建てられた一軒家。
その山にはあと三ヶ所未完成の家屋があるが、何故か工事が止まっているようだった。
また、山と麓の集落とを結ぶ道の両脇には、道祖神が向かい合わせに祀られていた。本来道祖神とは外敵から集落を守るため、外側に向けて祀られるもの。それが向かい合わせになっているのは何故なのか。
まるで、この道を通ってくる『悪いモノ』を、集落に入れさせないかのようではないか。
家の中に時折現れる黒い影。そして妹の元に夜現れるという『ヒヒノ』という謎の存在。
この家、絶対におかしい。
それらのことをさりげなく家族に訊ねる翔太だが、両親も姉もそのような違和感を全く感じていない。
目に見えるような『異常の証』を見つけなければ、家族に強く訴えかけても信じて貰えるとは思えない。
そう考えた翔太は、近所に住む同い年の少年・幸平の力を借りて、この『山の家』の秘密を探りはじめる。
幸平の話によると、山の家に住んだ家族はすぐに引っ越してしまい、住んでいる間に、家族が死んだこともあるらしい。
新聞の地方面などを調べる二人だが思うように成果が出ない。
そんなある日、翔太は以前山の家に住んでいた少女の日記を見つける。
日記には、日々おかしな現象に気付いていく少女の苦悩が綴られていた。そして最後のページには、乱れた字でこう書かれていた。
『山の家に住んじゃダメ!今すぐ、にげて!』
・・・・・・・・・・・・
幼い時から何度か、嫌な胸騒ぎで家族の危機を感じていた翔太。
引っ越し先へ向かう途中で三度もその胸騒ぎに襲われ、新しい家に恐怖を感じる。
そして、家を一目見た時にその疑惑は確信へと変わります。
ただ、それを感じているのは翔太のみ。
翔太は、何とか家族に危機を伝えようとしますが、まだ何も起こっていない現状では何の説得力もありません。
その間にも次々と起こるおかしな現象。
気付いているのは翔太のみ。
そういうハラハラ感がたまりません。
けど、途中から何か怖くなくなってきてしまいした。
というのも、途中から翔太と幸平に降りかかるピンチが物理的なものばっかりで。何かちょっと違う方向に行ってるなぁ、と。
ホラーなんだからもっとメンタル部分で攻めてほしかったというか。メンタル方向の恐怖が無かったわけではないんですが、割合的に少なすぎ。
あとオチも不満。確かに綺麗なオチではあるものの、このストーリーではちょっと無理矢理な印象。
同じく光文社書き下ろしだった「禍家」の方が完成度も怖さも上でしたね。