74.「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」辻村深月 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

74冊目
「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
辻村深月




神宮寺みずほと望月チエミ。



家が近所で幼馴染み、まさしく親友と呼びあえる仲だった二人は、違う高校に通い始めたあたりから徐々に疎遠になっていった。



そして、みずほは東京の四年制大学に進み、一旦故郷に戻ったもののその後結婚して東京住まい。夫と二人暮らしで、フリーランスのライターをしている。



一方チエミは、短大に進み地元企業の契約社員として働く現在に至るまで両親と同居をし続けており、未婚。



そして現在。二人は30歳となっていた。



そんなある日、みずほに母親から伝えられた「事件」。



望月家でチエミの母が包丁で刺し殺されていて、チエミは失踪。家からは母とチエミの預金通帳がなくなっていた。



しかも包丁からはチエミの指紋が検出され、脱衣場でチエミが血痕の付いた服を着替えた形跡まで警察の捜査で認められた。



当然チエミは容疑者として警察に追われる身となるが、その行方は杳として知れない。



みずほはチエミの交遊関係を辿ることで何か掴めないかと、ひとり行動を開始する。



高校時代の友人、みずほが一旦地元に帰っていた頃チエミと共に遊んでいた女友達、その頃チエミが交際していた男性、契約社員として働いていた会社の同僚、小学生時代の恩師、等々。



警察にも見つけられていないチエミを、みずほは見つけることが出来るのか。



そして行方を眩ませ続けているチエミは、一体何を思うのか…




…………………………




始めの方に語られるのは、チエミの純粋で真面目なところ。そして、理想的と言えるほど良好な両親との関係。



そこに、娘が母親を刺し殺すような原因は見つかりません。



そこに対比されるかのように語られる、みずほと母親のいびつな関係。



娘による母親殺しが起こり得るとしたら神宮寺家ではないのか。
それがなぜ望月家で起こらなければならなかったのか。
まるでそう言われているようでした。



けれども交遊関係を辿るうちに見えてくるチエミの新たな一面。



みずほが話を聞いた中には、その姿にあからさまな違和感や嫌悪感を見せる人もいます。



その、徐々に内実が明らかになっていく過程は、流石です。



そして最後に明かされる「事件」の真実。



緻密で、繊細で、面白かったです。



…面白かったですが、『とても』面白かった、とはちょっと言い難いです。



というのも、みずほとチエミをはじめ、みずほが話を聞いて回る人もほとんどが女性なんです。



男性も少しはいるんですが、はっきり言ってみんな端役。



そのせいなのかどうなのか、独身独居アラサー男子の私としては共感と感情移入があんまり出来なかったのが残念でした。



女性が読むとまた感想が違ってくるとは思うんですが…。